(法1条) この法律は、労働保険の事業の効率的な運営を図るため、 ①労働保険の保険関係の成立及び消滅 ②労働保険料の納付の手続 ③労働保険事務組合等に関し必要な事項を定めるものとする。 |
【定義】
●「労働保険」とは⇒労災保険と雇用保険の総称。
●「賃金」とは⇒賃金、給料、手当、賞与その他名称のいかんを問わず、労働の対償として事業主が労働者に支払うもの(通常以外のもので支払われるものであつて、厚生労働省令で定める範囲外のものを除く。)をいう。
・賃金のうち通貨以外のもので支払われるものの評価に関し必要な事項⇒厚生労働大臣が定める。
●「保険年度」とは⇒4月1日から翌年3月31日までをいう。
【その他】
●「臨時に支払われる賃金」「3箇月を超える期間ごとに支払われる賃金」は労働保険徴収法においては賃金に含める。
●労働協約等により事業主に支払い義務のある結婚祝金や災害見舞金等⇒労働保険徴収法においては賃金に含めない。
【適用時用(強制適用事業・暫定任意適用事業)】
●強制適用事業⇒法定の要件に該当する場合⇒事業主の意思にかかわらず労働保険が適用
●暫定任意適用事業⇒厚生労働大臣の認可を受けて労働保険に加入
【事業(継続事業・有期事業)】
●継続事業⇒事業の期間が予定されていない事業
●有期事業⇒事業の期間が予定されている事業
●労働保険徴収法における有期事業⇒建設の事業と立木の伐採の事業の2つ
(有期事業として扱われるのは…労災保険の保険関係だけ)
【一元適用事業・二元適用事業】
●一元適用事業⇒労災保険及び雇用保険の保険関係が一の保険関係として、労働保険料の申告・納付等の事務を一元的に行う事業
●二元適用事業⇒労災保険及び雇用保険の適用範囲の違いなどから、労働保険料の申告・納付等の事務を別個に行う事業
●二元適用事業⇒
①都道府県及び市町村が行う事業
②港湾労働法の適用される港湾運送の事業
③農林水産の事業
④建設の事業
●国の行う事業⇒労災保険法が適用されないため、二元適用事業ではない。
●労働保険の(労災保険、雇用保険)の適用事業の事業主は、
①その事業が開始された日
②その事業が適用事業に該当するに至った日
⇒その事業につき、それぞれの保険関係が成立(強制適用)
【保険関係の成立の届け出】
●保険関係が成立した事業の事業主
⇒成立した日から10日以内(翌日起算)に『保険関係成立届』を所轄労働基準監督署長又は所轄公共職業安定所長に提出
●事業の氏名、事業の種類、住所等に変更があった場合
⇒変更が生じた日の翌日から起算して10日以内に『名称・所在地変更届』を政府に届け出る。
【その他】
●労災保険関係成立表
労災保険に係る保険関係が成立している建設の事業に係る事業主は
⇒『労災保険関係成立表』を見やすい場所に掲示しなければならない。
●保険関係が成立している事業が廃止、又は修了したときは、その事業についての保険関係は、
その翌日に消滅。
●保険関係が消滅した場合⇒届け出は不要。ただし、労働保険料の確定精算が必要。
労災保険 |
雇用保険 | |
成立時期 | 事業主が申請し、厚生労働大臣の認可(都道府県労働局長に権限委任)があった日 | |
申請要件 | 事業主の意思のみ |
事業主の意思 + 労働者の2分の1以上の同意 |
申請書の提出先 |
所轄都道府県労働局長 (所轄労働基準監督署長を経由) |
所轄都道府県労働局長 (所轄公共職業安定所長を経由) |
●労災保険⇒労働者の過半数が希望するとき
●雇用保険⇒労働者の2分の1以上が希望するとき
⇒事業主の意思がない場合であっても、加入申請の義務が生じる。
労災保険 | 雇用保険 | |
消滅時期 |
①事業が廃止され、又は終了した日の翌日 ②事業主が保険関係の消滅の申請をし、厚生労働大臣に認可が(都道府県労働局長に権限委任)があった日の翌日 |
|
申請要件 |
①事業主の申請 ②労働者の過半数の同意 ③保険関係成立後1年を経過していること |
①事業主の申請 ②労働者 (雇用保険の被保険者である者に限定) の4分の3以上の同意 |
申請書提出先 |
所轄都道府県労働局長 (所轄労働基準監督署長を経由) |
所轄都道府県労働局長 (所轄公共職業安定所長を経由) |
●労働保険(労災保険、雇用保険)の強制適用事業が、使用労働者の減少等により、暫定任意適用事業に該当した時
⇒その翌日に任意加入の認可があったものとみなされる。
●労働保険は、
(原則)「事業」を単位として適用。
(例外)小規模な事業に関して一定の要件に該当する場合は、複数の保険関係を一括し、労働保険料の申告・納付等の事務を行うことができる。
【有期事業の一括の要件】
(1) 事業主が同一人であること。
(2) それぞれの事業が建設の事業または立木の伐採の事業であること。
(3) それぞれの事業の規模が、下記のいずれにも該当すること
①概算保険料相当額:160万円未満
②
・建設の事業:請負金額が1億9,000万円未満
・立木の伐採の事業:素材の見込生産量が1,000立方メートル未満
(4)それぞれの事業が他のいずれかの事業の全部又は一部と同時に行われていること
(5)上記のほか、厚生労働省令で定める①~④の要件に該当すること
① それぞれの事業が労災保険に係わる保険関係が成立している建設の事業又は立木の伐採の事業であること
②それぞれの事業が、労災保険率表上の事業の種類と同一であること。
③労働保険料の納付事務が、一の事務所(一括事務所)で行われていること
④それぞれの事務所が、一括事務所の所轄都道府県労働局の管轄区域、またはそれと隣接する都道府県労働局の管轄区域内で行われこと
【有期事業一括の効果】
●有期事業の一括が行われた場合
⇒それぞれの事業が一の事業(一括有期事業)とみなされ、一括事務所で
・労働保険料の申告・納付、年度更新の手続記ができる。
【一括有期事業についての事業主の届出】
●『一括有期事業開始届』
⇒それぞれの事業を開始した時、開始の日の属する月の翌月10日までに、所轄労働基準監督署長に提出
●『一括有期事業報告書』
⇒次の保険年度の6月1日から起算して40日以内又は保険関係が消滅した日から起算して50日以内に、所轄都道府県労働局歳入徴収官に提出
【その他】
●一括されるのは…労災保険に係る保険関係のみ
●機械装置の組み立て又は据え付けの事業については、地域的な制限はない。
(法8条) 建設の事業が数次の請負によつて行なわれる場合には、労働保険徴収法の規定の適用については、その事業を一の事業とみなし、元請負人のみを当該事業の事業主とする。 |
(法9条) 事業主が同一人である2以上の事業(有期事業以外の事業に限る。)であって、厚生労働省令で定める要件に該当するものに関し、事業主が当該2以上の事業について成立している保険関係の全部又は一部を一の保険関係とすることにつき申請をし、厚生労働大臣の認可があったときは、労働保険徴収法の規定の適用については、認可に係る2以上の事業に使用されるすべての労働者は、これらの事業のうち厚生労働大臣が指定するいずれか一の事業(指定事業)に使用される労働者とみなす。この場合においては、厚生労働大臣が指定する一の事業以外の事業(被一括事業)に係る保険関係は、消滅する。 |
●政府は、労働保険の事業に要する費用にあてるため保険料を徴収する。
①一般保険料…事業主が労働者に賃金を支払う賃金総額を基礎として算定する保険料
②第一種特別加入保険料…中小事業主等の特別加入者に係る保険料
③第二種特別加入保険料…一人親方等の特別加入者に係る保険料
④第三種特別加入保険料…海外派遣者の特別加入者に係る保険料
⑤印紙保険料…雇用保険の日雇労働被保険者に係る保険料
●一般保険料の額は、賃金総額に係る保険料率を乗じて得た額。
一般保険料額=賃金総額×一般保険料率
【賃金総額】とは
(原則)事業主がその事業に使用するすべての労働者に支払う賃金の総額
(例外)労災保険に係る保険関係が成立している次の事業のうち賃金総額を正確に算定することが困難なもの⇒賃金総額の算定方法は別に定める。(賃金総額の特例)
【賃金総額の特例】
①請負による建設の事業 | 請負金額×労務費率(19%〰40%) |
②立木の伐採の事業 | 都道府県労働局長が定める素材1立方メートルの生産に必要な労務費の額×生産するすべての素材の材積 |
③造林の事業、木炭・薪を生産する事業その他の林業の事業 |
厚生労働大臣が定める平均賃金相当額 ×それぞれの労働者の使用期間の総日数 |
④水産動植物の採捕又は養殖の事業 |
●労災保険+雇用保険の保険関係が成立⇒労災保険料率+雇用保険料率
●労災保険の保険関係のみが成立している事業⇒労災保険料率
●雇用保険の保険関係のみが成立している事業⇒雇用保険料率
(法12条2項) ・過去3年間の業務災害及び通勤災害に係る災害率並びに ・二次健康診断等給付に要した費用の額、 ・社会復帰促進等事業として行う事業の種類及び内容その他の事情を考慮して厚生労働大臣が定める。 |
●概算保険料:所定に期間に係る労働保険料。その期間の初めに賃金総額の見込み額に基づいて算定し、申告・送付をする。
●確定保険料:所定の期間の終了後もしくは事業が廃止され、終了したときに、申告・納付する労働保険料。実際に支払われた賃金総額に基づいて算定。
原則(年度更新) | 保険年度の6月1(当日起算)から40日以内(7月10日まで) |
保険年度の中途に 保険関係が成立 |
保険関係が成立した日(翌日起算)から50日以内 |
【計算式】
概算保険料額=賃金総額の見込額×一般保険料率
●特別加入者がいる場合は、それぞれの特別加入保険料額
(保険料算定基礎額の見込額×特別加入保険料率)を合算
【賃金総額の見込額の特例】
●賃金総額の見込み額が、直前の保険年度の賃金総額(確定保険料の算定の基礎になった賃金総額)の100分の50以上100分の200以下である場合、直前の保険年度の賃金総額を、その保険年度の賃金総額の見込額とする。
●特例が適用される場合
⇒免除対象高年齢労働者に係る高年齢者賃金総額についても直前の保険年度の額を用いる。
●有期事業の事業主は、労働保険料を『概算保険料申告書』に添えて、保険関係が成立した日(翌日起算)から20日以内に納付しなければならない。
●保険関係が成立した日以降に政府の承認を受けた特別加入者に係る特別加入保険料は、承認があった日(翌日起算)から20日以内に納付しなければならない。
【有期事業の概算保険料額の計算式】
概算保険料=賃金総額の見込額×一般保険料率
●特別加入者がいるときは、それぞれの特別加入保険料額
(保険料算定基礎額の見込額×特別加入保険料率)を合算
【概算保険料として納付する特別加入保険料】
●継続事業
・第一種特別加入保険料
・第三種特別加入保険料
●有期事業
・第一種特別加入保険料
●概算保険料の申告は、『概算保険料申告書』を、下記の区分に応じて所轄都道府県労働局歳入徴収官に提出することにより行われる。
申告書の経由 |
①労働保険事務組合に労働保険事務の処理を委託していない一元適用事業 ②労災保険に係る保険関係が成立している二元適用事業 ③二元適用事業についての第一種特別加入保険料 ④第二種特別加入保険料 ⑤第三種特別加入保険料 |
①労働保険事務組合に労働保険事務の処理を委託している一元適用事業 ②雇用保険に係る保険関係が成立している二元適用事業 ③一元適用事業について第一種特別加入保険料
|
日本銀行又は労働基準監督署を経由して、申告書を提出することができる | 日本銀行を経由して、申告書を提出することができる | |
保険料の納付 |
①日本銀行 ②所轄都道府県労働局収入官吏 ③所轄労働基準監督署収入官吏 |
①日本銀行 ②所轄都道府県労働局収入官吏
|
●所轄都道府県労働局歳入徴収官は、事業主が概算保険料申告書を提出しない時、又はその申告書の記載に誤りがあると認めるときは、労働保険料の額を決定し、これを事業主に通知します。
●認定決定に係る概算保険料は、通知を受けた日(翌日起算)から15日以内に、『納付書』により納付。
●事業主は、下記に該当した時は、増加概算保険料を申告・納付しなければならない。
【賃金総額等の見込額が増加した時】
概算保険料の算定に用いた賃金総額の見込額又は特別加入保険料に係る保険料算定基礎額が増加した場合場合において、下記のいずれにも該当するとき
①増加後の賃金総額等の見込額が、増加前の賃金総額等の見込額の100分の200を超えているとき
②増加後の賃金総額等の見込額に基づき算定した概算保険料と既に納付した概算保険料との差額が13万円以上である。
【一般保険料率が変更されたとき】
労災保険又は雇用保険のいずれか一方の保険関係のみが成立していた事業において両方の保険関係が成立していたため、一般保険料率が変更された場合において、下記のいずれにも該当するとき
①変更後の一般保険料率に基づいて算定した概算保険料の額が、既に納付した概算保険料額の100分の200を超えているとき
②その差額が13万円以上である。
【その他】
●増加概算保険料は、賃金総額等の増加が見込まれた日又は一般保険料率が変更された日から
⇒30日以内(翌日起算)に、『増加概算保険料申告書』に添えて申告・納付。
●増加概算保険料を申告・納付しない場合でも、政府による認定決定は行われない。
●政府は、一般保険料率、第一種特別加入保険料率、第二種特別加入保険料率又は第三種特別加入保険料率を引き上げたとき
⇒労働保険料を追加徴収する。
●所轄都道府県労働局歳入徴収官は、通知を発する日から起算して30を経過した日を納期限と定め
『納付書』により、事業主に通知しなければならない。
●概算保険料
(原則)継続事業又は有期事業について算定した額をその期間の当初に一括して納付
(例外)所定の要件を満たさば、分割して納付することも可能
次のいずれかに該当する継続事業(一括有期事業を含む)の事業主は、『概算保険料申告書』を提出する際に申請することにより、延納することができる。 ①納付すべき概算保険料の額が40万円以上 (成立している保険関係が労災保険又は雇用保険のいずれか一方のみである場合…20万円以上) であること ②労働保険事務の処理を労働保険事務組合に委託していること |
【各期の区分及び納期限】
各期の区分 |
納期限 |
第1期:4月1日〰7月31日 | 6月1日から起算して40日以内:7月10日 |
第2期:8月1日〰11月30日 | 10月31日(11月14日) |
第3期:12月1日〰翌年の3月31日 | 翌年の1月31日(翌年の2月14日) |
成立時期 | 各期の区分 | 納期限 |
4月1日〰5月31日 | 第1期:成立日〰7月31日 | 保険関係成立日の翌日から起算して50日以内 |
第2期:8月1日〰11月30日 | 10月31日(11月31日) | |
第3期:12月1日〰翌年の3月31日 | 翌年の1月31日(翌年の2月14日) | |
6月1日〰9月30日 | 第1期:成立日〰11月30日 | 保険関係成立日の翌日から起算して50日以内 |
第2期:12月1日〰翌年の3月31日 | 翌年の1月31日(翌年の2月14日) |
●下記の医アずれかに該当する有機事業の事業主は、概算保険料申告書を提出する際に申請をすることにより、延納することができる。
●労働保険事務の処理をを労働保険事務組合に委託している場合
⇒概算保険料の額は問われない。
●事業の全期間が6カ月以内の有期事業に係る概算保険料を延納することはできない。
【延納の方法】
各期の区分 | 納期限 |
4月1日〰7月31日 | 3月31日 |
8月1日〰11月30日 | 10月31日 |
12月1日〰翌年3月31日 | 翌年1月31日 |
①認定決定の通知を受けた事業主は、認定決定に係る概算保険料を納付する際に申請することにより延納することができる。 ②延納の方法は、継続事業に係る延納、有期事業に係る延納と同じ。 |
●当初の概算保険料(認定決定に係るものを含む)を延納している事業主は、『増加概算保険料申告書』を提出する際に申請することにより延納することができる。
●増加概算保険料の要件に該当した日の属する期分の概算保険料は、要件に該当した日から起算して30日以内(翌日起算)に納付。
各期の区分 |
第1期 4月1日〰7月31日 |
第2期 8月1日〰11月30日 |
第3期 12月1日〰翌年3月31日 |
納期限 | 3月31日 | 10月31日 | 翌年1月31日 |
●追加徴収に係る概算保険料は、増加概算保険料の延納の仕組みに準じて延納できる。
●最初期分の概算保険料は、追加徴収の通知を発する日から起算して30日を経過した日まで。
●継続事業(一括有期事業を含む)の事業主は、保険年度ごとに、『確定保険料申告書』を提出しなければならない。
【申告期限】
(原則)保険年度の6月1日(当日起算)から40日以内(7月10日まで)
(保険年度の中途に保険関係が消滅)保険関係が消滅した日(当日起算)から50日以内
●有機事業の事業主は、保険関係が消滅した日(当日起算)から50日以内に、労働保険料を『確定保険料申告書』に添えて納付しなければならない。
概算保険料の納付状況 |
納付額 |
概算保険料を納付していないとき | 確定保険料の額 |
納付した概算保険料が確定保険料に足りない時 | 不足額 |
納付した概算保険料が確定保険料と同額であるとき | 確定保険料申告書のみ提出 |
①確定保険料の額は、対象となる期間に使用したすべての労働者に支払った賃金の総額に基づき、概算保険料の額と同様に算定。 ②確定保険料の申告・納付先は概算保険料の申告・納付先と同じ。 ただし、納付すべき確定保険料がない時は、日本銀行を経由して『確定保険料申告書』を提出することはできない。 |
●政府(所轄都道府県労働局歳入徴収官)は、事業主が、
確定保険料申告書を提出しない時又は
その申告書の記載に誤りがあると認めるとき
⇒労働保険料の額を決定しう、事業主に通知する。
概算保険料の納付状況 | 納付額 |
①概算保険料を納付していない時 | 認定決定された確定保険料の額を納付 |
②納付した概算保険料が認定決定された額に足りない時 | 不足額を納付 |
●事業主が納付した労働保険料の額が
確定保険料の額を超えているときは、その超える額を次の保険年度の労働保険料、未納の労働保険料に充当し、又は還付をする。
還付 |
①確定保険料進行所を提出する際又は ②確定保険料の認定決定を受けた日の翌日から起算して10日以内に請求した時は、所轄都道府県労働局資金前渡官吏が超過額を還付する。 |
充当 |
事業主による還付請求がないと場合 ⇒所轄都道府県労働局歳入徴収官は、次の保険年度の概算保険料、未納の労働保険料、未納の一般拠出金などに充当。 |
政府は、事業主から、印紙保険料以外の労働保険料(継続事業の概算・確定保険料に限定)の納付をその預金口座又は貯金口座のある金融機関に委託して行うことを希望する旨(口座振替)の申出があつた場合には、その納付が確実と認められ、かつ、その申出を承認することが労働保険料の徴収上有利と認められるときに限り、その申出を承認することができる。 |
【継続事業のメリット制の要件(すべて満たした時に適用)】
①連続する3保険年度中の最後の保険年度に属する3月31日(基準日)において、労災保険に係る保険関係が成立した後3年以上経過していること。
②連続する3保険年度中の各保険年度において、次のいずれかに該当する事業であること。
・100人以上の労働者を使用する事業
・200人以上100人未満の労働者を使用する事業であって、災害度係数が0.4以上であるもの
・一括有期事業である建設の事業又は立木の伐採の事業であって、確定保険料の額が100万円以上であること。
③連続する3保険年度の収支率が、100分の85を超え、又は100分の75以下であること
【メリット制が適用された場合の率】
基準日の属する保険年度の次の次の保険年度の労災保険率を、その事業についての労災保険率(基準労災保険率)から非業務災害率を減じた率を100分の40(一括有期事業にうち立木の伐採の事業については100分の35)の範囲内で引き上げ又は引き下げた率に非業務災害率を加えた率
【収支率の計算】
【収支率の計算から除外されるもの】
①通勤災害に係る保険給付額
②第三者特別加入者に係る保険給付額
③障害補償年金差額一時金
④特定疾病に係る保険給付額
⑤遺族補償年金の受給資格者が全員失権した場合に支給される遺族補償一時金
⑥①〰⑤の保険給付に係る特別支給金
⑦二次健康診断等給付に要した額
【有機事業のメリット制の要件(すべて満たした場合に適用)】
①労災保険に係る保険関係が成立している建設の事業、又は立木の伐採の事業
②確定保険料の額が、100万円以上あること、又は
・建設の事業の場合は、請負金額が1億2,000万円以上であること
・立木の伐採の事業の場合、素材の生産量が1,000立方メートル以上であること
③収支率については、次の要件を満たしていること
(イ)事業終了日から3カ月を経過した日前までの間について、第1種調整率を用いて算定した収支率が100分の85を超え、又は100分の75以下であり、かつ、その割合が事業終了日から3カ月を経過した日後において一定の範囲を超えて変動しないと認められること
(ロ)(イ)に該当しない場合(3カ月経過日以後も保険給付等が行われることにより、終始率が一定範囲を超えて変動するとき)で、事業終了日から9カ月を経過した日前までの間については、第2種調整率を用いて算定した収支率が100分の85を超え、又は100分の75以下であること
【メリット制の適用】
有期事業のメリット制が適用された場合
⇒その事業に係る確定保険料の額は、本来の額から非業務災害率に応ずる額を減じた額が、100分の40(立木の伐採の事業については、100分の35)の範囲内で引き上げ又は引き下げられる。
●確定保険料の額を引上げ
⇒所轄都道府県労働局歳入徴収官は、通知を発する日から起算して30日を経過した日を納期限と定め、納付すべき差額を『納入告知書』により通知。
●確定保険料の引下げ
⇒所轄都道府県労働局歳入徴収官は、引下げられた額を通知
・その通知の日の翌日から起算して10日以内に還付請求をしたときは、所轄都道府県労働局資金前渡官吏がその差額を還付。
・還付請求がない時⇒所轄都道府県労働局歳入徴収官は、引下げに伴う差額を未納の労働保険料、未納の一般拠出金に充当。
●印紙保険料の額は、日雇労働被保険者1人につき下記のとおり定められている。
●印紙保険料は、日雇労働被保険者に賃金を支払う都度納付。
賃金の日額 | 印紙保険料(日額) |
11,300円以上 | 第1級:176円 |
8,200円以上 11,300円未満 |
第2級:146円 |
8,200円未満 | 第3級:96円 |
①雇用保険印紙は、総務大臣が厚生労働大臣に協議して定める郵便事業株式会社の営業所又は郵便局において販売。
②事業主は、雇用保険印紙を購入しようとする時は、あらかじめ、雇用保険印紙購入通帳交付申請書を所轄公共職業安定所長に提出して、雇用保険印紙購入通帳の交付を受ける。
事業に氏は、下記に該当するときは、郵便事業株式会社の営業所又は郵便局に雇用保険印紙購入通帳を提出し、雇用保険印紙の買い戻しを申し出ることができる。
買い戻し事由 | 確認 | 期間 |
①雇用保険に係る保険関係が消滅 | 所轄公共職業安定所長の確認が必要 | 制限なし |
②日雇労働被保険者を使用しなくなったとき |
||
③雇用保険印紙が変更されたとき |
確認不要 | 変更日から6箇月間 |
事業主は、日雇労働被保険者を使用した時は、印紙保険料の納付に関する帳簿(雇用保険印紙受払簿)を備え、毎月における納付状況を記載しなければならない。 ⇒違反した場合は、6カ月以下の懲役又は30万円以下の罰金 |
●事業主が印紙保険料の納付を怠ったときは、政府(所轄都道府県労働局歳入徴収官)は、納付すべき印紙保険料の額を決定し、『納入告知書』により事業主に通知する。
●事業主が、正当は理由がないと認められるにもかかわらず、印紙保険料の納付を怠ったときは、追徴金が徴収される。
●政府は次に掲げる場合、追徴金を徴収する。
(A)認定決定に係る確定保険料又はその不足額を納付しなければならない場合
(B)正当な理由がなく印紙保険料を納付せず、認定決定を受けた場合
(A)の場合 | 納付額(1,000円未満の端数切り捨て)×100分の10 |
(B)の場合 | 納付額(1,000円未満の端数切り捨て)×100分の25 |
労働保険料その他労働保険徴収法の規定による徴収金を納付しない者があるときは、政府は、期限を指定して督促しなければならない。
【方法】
督促は、納付義務者に対して督促状を発することにより行う。
督促状の指定期限は⇒督促状を発する日から起算して10日以上経過した日
【滞納処分】督促を受けた者が、督促状の指定期限までに労働保険料その他労働保険徴収法に規定による徴収金を納付しないときは、政府は、国税滞納処分の例により、これを処分。
⇒(滞納処分:滞納者の財産を差し押さえて換価し、滞納している金額に充てる行政処分)
労働保険料の納付を督促したときは、労働保険料の額(1,000円未満の端数は切り捨て)に納期限の翌日から完納又は財産差押さえの日の前日までの期間の日数に応じ、年14.6%(納期限の翌日から2カ月を経過する日までの期間については年7.3%)の割合による延滞金(100円未満は数切捨て)が徴収される。 |
労災保険の保険料 | 全額事業主負担 |
雇用保険の一般保険料 |
●被保険者負担分:賃軍総額×(雇用保険率-二事業率)×2分の1 ●事業主負担分:被保険者負担分以外の部分 |
雇用保険の印紙保険料 |
事業主及び日雇労働被保険者で折半負担 (1円未満の端数は、事業主が負担) |
●事業主は、被保険者に賃金を支払う都度、その賃金に応ずる被保険者の負担すべき一般保険料の額に相当する額を賃金から控除することができる。
●事業主は、労働保険料控除に化する計算書を作成し、控除額を被保険者に通知しなければならない。
また、一般保険料控除計算簿を作成し、事業所毎に備える必要がある。
(労働基準法に規定する賃金台帳でも可)
●労働保険事務組合としての業務を行おうとする事業主の団体又は連合団体等は、厚生労働大臣の
認可(都道府県労働局長に権限委任)をうけなければならない。
【申請手続】
労働保険事務組合認可申請書に下記の書類を添付して、主たる事務所の所在地を管轄する都道府県労働局長に提出。
①定款、規約等団体又は連合団体の目的、組織等を明らかにする書類
②労働保険事務の処理方法を明らかにする書類
③最近の財産目録、貸借対照表及び損益計算書等の資産の状況を明らかにする書類
【認可基準】
・法人でない団体等にあっては、代表者の定め
・労働保険事務の委託を予定している事業主が30以上あること
・団体の運営実績が2年以上あること
【委託事業主の範囲】
事業の種類 | 事業規模(使用労働者数) |
金融業・保険業・不動産業・小売業 | 常時50人以下 |
卸売行・サービス業 | 常時100人以下 |
その他の業種 | 常時300人以下 |
●業務の廃止⇒業務を廃止しようとするときは、60日前までに、『労働保険事務組合業務廃止届』を都道府県労働局長に提出
●委託等⇒労働保険事務の処理の委託(委託の解除)があったときは、遅滞なく、
『労働保険事務等処理委託届(委託解除届)』を、都道府県労働局長に提出。
厚生労働大臣(都道府県労働局長に権限の委任)は、労働保険事務組合が ①労働保険徴収法等の規定に違反したとき ②労働保険事務の処理を怠ったとき ③労働保険に事務が著しく不当であると認められるとき ⇒認可を取り消すことができる。 |
労働保険料その他の労働保険徴収法の規定による徴収金の先取特権の順位
⇒国税及び地方税に次ぐ