労働基準法

《目次》【賃金支払いの5原則】

【賃金支払の5原則 通貨払いの原則】 (法24条)

【問題】使用者は、賃金を通貨で支払わなければならないが、当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定がある場合においては、通貨以外のもので支払うことができる。

(平成20年 問3A)
【解答】×
【解説】(法24条1項)
■通貨払いの原則の例外の設問。
①法令による別段の定めがある場合(現在のところ規定なし)
②労働協約に別段の定めがある場合
③厚生労働省令で定めている場合
・賃金の口座振込みによる場合(すべての労働者の同意が必要))
・退職金について金融機関支払小切手等(すべての労働者の同意が必要)


【問題】使用者は、賃金の全額を支払わなければならないが、労働協約に別段の定めがある場合に限って、賃金の一部を控除して支払うことができる。

(平成20年 問3E)
【解答】×
【解説】(法24条1項)
■賃金全額払いの原則の例外として賃金の一部を控除して支払うことが認められているのは、
①法令に別段の定めがある場合、
②事業場の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定がある場合
■「労働協約に別段の定めがある場合に限って」とした箇所がは誤り。


【問題】使用者は、賃金を、銀行に対する労働者の預金への振込みによって支払うためには、当該労働者の同意を得なければならない。

(平成20年 問3B)

【解答】○
【解説】(法24条1項)
■賃金を口座への振込みによって支払う場合⇒
①労働者の同意
②本人名義の預貯金口座、証券総合口座への振込み
③振り込まれた賃金の全額が所定の賃金支払日に払い出し得ること

「同意」に関しては、その形式は特に問われていない。


【問題】使用者は、労働者の同意を得た場合には、賃金をその労働者の指定する銀行その他の金融機関の口座に振り込むことができる。そして、当該事業場の労働者の過半数を組織する労働組合がある場合には、この労働組合との労働協約をもってこの労働者の同意に代えることができる。

(平成13年 問3D)
【解答】×
【解説】(法24条1項)
■前半の論点は正しい。
口座振込みの場合⇒個人個人の労働者の同意が必要


【問題】賃金は通貨で支払わなければならず、労働協約に定めがある場合であっても、小切手や自社製品などの通貨以外のもので支払うことはできない。

(平成21年 問4A)
【解答】×
【解説】(法24条)
■「労働協約」に定めがあれば、通貨以外(現物)でも可能。
■「労使協定」は現物給与不可。


【問題】労働基準法第24条第1項においては、賃金は、通貨で支払わなければならないと規定されているが、同項ただし書において、法令に別段の定めがある場合、当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定がある場合又は厚生労働省令で定める賃金について確実な支払の方法で厚生労働省令で定めるものによる場合においては、通貨以外のもので支払うことができると規定されている。

(平成14年 問3E)

【解答】×

【解説】(法24条1項)
■『当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定がある場合』=労使協定
労使協定を締結しても賃金を通貨以外のもので支払うことはできないため誤り。


【問題】1か月の賃金支払額(賃金の一部を控除して支払う場合には、控除した額)に100円未満の端数が生じた場合、50円未満の端数を切り捨て、それ以上を100円に切り上げて支払うことは、労働基準法第24条違反としては取り扱わないこととされている。

(平成15年 問3B)

【解答】○
【解説】(法24条、昭和63年3月14日基発150号)
■端数処理に関する問題です。
・1カ月の賃金支払額に100円未満の端数が生じた場合⇒50円未満切り捨て、これ以上を100円に切り上げて支払うこと。
・1カ月の賃金支払額に1000円未満の端数翌月の賃金支払日に繰り越して支払うことは可能


【賃金支払いの5原則 直接払いの原則】 (法24条)

【問題】賃金は直接労働者に支払わなければならず、労働者の委任を受けた弁護士に賃金を支払うことは労働基準法第24条違反となる。

(平成21年 問4B)
【解答】○
【解説】(法24条、昭和63年3月14日基発150号)
■賃金の直接払いの原則の例外⇒使者に支払うことは可能。
たとえ、第三者に賃金受領権限を与える委任、代理等の行為も法違反になります

【問題】1カ月の賃金支払額(賃金の一部を控除して支払う場合には控除した額)に生じた千円未満の端数を翌月の賃金支払日に繰り越して支払うことは、賃金支払いの便宜上の取扱いと認められるから、労働基準法第24条違反としては取り扱わないこととされている。

(平成18年 問5A)

【解答】○

【解説】(法24条1項)

■設問のとおり正しい。


【問題】賃金は、直接労働者に、支払わなければならないが、未成年者の親権者又は後見人は、その賃金を代わって受け取ることができる。

(平成20年 問3D)
【解答】×
【解説】(法24条1項、法59条)
■賃金の直接払いの例外は、使者に対して支払う場合だけ。
■未成年者であっても独立して賃金を請求することができ、親権者又は後見人は、未成年者の賃金を代って受け取ることはできない。


【賃金支払いの原則 全額払いの原則】 (法24条)

【問題】1日及び1か月における時間外労働、休日労働及び深夜業の各々の時間数の合計に1時間未満の端数がある場合に、30分未満の端数を切り捨て、それ以上を1時間に切り上げること、1時間当たりの賃金額及び割増賃金額に円未満の端数が生じた場合に、50銭未満の端数を切り捨て、それ以上を1円に切り上げること並びに1か月における時間外労働、休日労働及び深夜業の各々の割増賃金の総額に1円未満の端数が生じた場合に、50銭未満の端数を切り捨て、それ以上を1円に切り上げることは、いずれも労働基準法第24条及び第37条違反としては取り扱わないこととされている。

平成25年 問3B)

【解答】×

【解説】
■「1日及び1か月」⇒「1か月」にすれば正しい。
■割増賃金計算における端数処理

1か月における時間外労働の時間数の合計に1時間未満の端数がある場合
⇒30分未満の端数を切り捨て、それ以上を1時間に切り上げること。


【問題】1カ月の賃金支払額(賃金の一部を控除して支払う場合には、控除後の額)に生じた千円未満の端数を翌月の賃金支払日に繰り越して支払うことは、労働基準法第24条違反としては取り扱わないこととされている。

(平成24年 問1A)

【解答】○

【解説】(法24条)

■千円未満の端数⇒翌月に繰り越し可能。


【問題】割増賃金の計算の便宜上、1日における時間外労働、休日労働及び深夜労働の各時間数に1時間未満の端数がある場合は、1日ごとに、30分未満の端数を切り捨て、30分以上の端数を1時間に切り上げて計算する措置は、法違反として取り扱わないこととされている。

(平成19年 問3E)

【解答】×

【解説】(法24条、法37条、昭和63年3月14日基発150号)
■割増賃金を計算する場合の端数処理についての問題。

①1箇月における時間外労働、休日労働及び深夜業の各々の時間数の合計に1時間未満の端数がある場合
⇒30分未満の端数を切り捨て、30分以上の端数を1時間に切り上げること

②1時間当たりの賃金額及び割増賃金額に円未満の端数が生じた場合
⇒50銭未満の端数を切り捨て、50銭以上の端数を1円に切り上げること

③ 1箇月における時間外労働、休日労働及び深夜業の各々の割増賃金の総額に円未満の端数が生じた場合
⇒50銭未満の端数を切り捨て、50銭以上の端数を1円に切り上げること


【問題】労働基準法第24条第1項本文においては、賃金は、その全額を支払わなければならないと規定されているが、同項ただし書において、法令又は労働協約に別段の定めがある場合においては、賃金の一部を控除して支払うことができると規定されている。

(平成18年 問2A)

【解答】×
【解説】(法24条1項)
■賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。
例外として
①法令に別段の定めがある場合
②「当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定」(労使協定がある場合
賃金の一部を控除して支払うことが可能。
■設問は「法令又は労働協約に別段の定めがある場合」とあるのでは誤り。


【問題】最高裁判所の判例によると、労働基準法第24条第1項本文の定めるいわゆる賃金全額払の原則の趣旨とするところは、使用者が一方的に賃金を控除することを禁止し、もって労働者に賃金の全額を確実に受領させ、労働者の経済生活を脅かすことのないようにしてその保護を図ろうとするものというべきであるから、使用者が労働者に対して有する債権をもって労働者の賃金債権と相殺することを禁止する趣旨をも包含するものであるが、労働者がその自由な意思に基づき当該相殺に同意した場合においては、当該同意が労働者の自由な意思に基づいてされたものであると認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するときは、当該同意を得てした相殺は当該規定に違反するものとはいえないものと解するのが相当である、とされている。

(平成18年 問2B)

【解答】○
【解説】(日新製鋼事件(平成2年11月26日最高裁判決))
■労働者が自由な意思に基づき相殺(合意相殺)した場合⇒全額払いの例外には反しない。


【問題】労働者が5分遅刻した場合に、30分遅刻したものとして賃金カットをするという処理は、労務の提供のなかった限度を超えるカット(25分についてのカット)について労働基準法第24条の賃金の全額払の原則に反し違法であるが、このような取扱いを就業規則に定める減給の制裁として同法第91条の制限内で行う場合には、同法第24条の賃金の全額払の原則に反しない。

(平成23年 問6D)

【解答】○
【解説】(法24条1項、昭和61年3月14日基発150号)
■遅刻、早退、欠勤等の時間の端数処理5分の遅刻を30分の遅刻として賃金カットする処理⇒賃金の全額払の原則に反し、違法
■ただし、就業規則に定める減給の制裁として、法91条(制裁規定の制限)の制限内で行う場合⇒適法


【問題】賞与を支給日に在籍している者に対してのみ支給する旨のいわゆる賞与支給日在籍要件を定めた就業規則の規定は無効であり、支給日の直前に退職した労働者に賞与を支給しないことは、賃金全額払の原則を定めた労働基準法第24条第1項に違反するとするのが最高裁判所の判例である。

(平成22年 問3A)
【解答】×
【解説】(法24条、大和銀行事件(昭和57年10月7日最高裁判決))
■賞与はその支給日現在の在籍者にのみ支給する旨の就業規則は有効。
■支給日の直前に退職した労働者に賞与を支給しないことは、賃金全額払の原則を定めた労働基準法第24条第1項に違反しない。


【問題】労働基準法第24条第1項の定めるいわゆる賃金全額払の原則は、使用者が労働者に対して有する債権をもって労働者の賃金債権と相殺することを禁止する趣旨をも包含するものであり、使用者の責めに帰すべき事由によって解雇された労働者が解雇無効期間中に他の職に就いて得た利益を、使用者が支払うべき解雇無効期間中の賃金額から控除して支払うことはおよそ許されないとするのが最高裁判所の判例である。

(平成21年 問4D)

【解答】×
【解説】(あけぼのタクシー事件(昭和62年4月2日最高裁判決))
■使用者の責めに帰すべき事由で解雇された労働者が解雇無効期間中に他の職に就いて利益を得た場合

⇒使用者は当該労働者に解雇無効期間中の賃金を支払うにあたり、(平均賃金の6割を超える部分の賃金額-解雇無効期間中に得た利益の額)を払うことができるとするのが最高裁判所の判断。


【賃金支払いの5原則 毎月1回以上払いの原則】 (法24条)

【問題】いわゆる年俸制で賃金が支払われる労働者についても、労働基準法第24条第2項のいわゆる毎月1回以上一定期日払の原則は適用されるため、使用者は、例えば年俸額(通常の賃金の年額)が600万円の労働者に対しては、毎月一定の期日を定めて1月50万円ずつ賃金を支払わなければならない。

(平成21年 問4E)
【解答】×
【解説】(法24条)
■年俸制で賃金が支払われる場合であっても⇒毎月1回以上一定期日払いが適用。
1回で総額が支払われるわけではない。
■必ずしも12カ月で割る必要もなく、賞与が発生させる場合には、例えば年2回の賞与含めて14で割り計算するケースも可能。


【問題】使用者は、1か月を超える期間の出勤成績によって支給される精勤手当について、毎月1回以上支払わなければならない。

(平成20年 問3C)

【解答】×
【解説】(法24条2項、則8条)
■賃金の毎月1回以上一定期日払いの原則の例外
①1箇月を超える期間の出勤成績によって支給される精勤手当
②1箇月を超える一定期間の継続勤務に対して支給される勤続手当
③1箇月を超える期間にわたる事由によって算定される奨励加給又は能率手当


【賃金の5原則 一定期日払いの原則】 (法24条)

【問題】定期賃金を、毎月の末日というような特定された日に支払うこと、又は毎月の第4金曜日というような特定された曜日に支払うことは、労働基準法第24条第2項に規定する賃金の一定期日払いの原則に違反しない。

(平成13年 問3E)
【解答】×
【解説】(法24条2項)
■「毎月第4金曜日」だと、賃金支払日が特定できないので法違反。
■「毎月の末日」という定め方は、支払日が特定可能なので問題なし。


【問題】賃金の所定支払日が休日に該当する場合は、労働基準法第24条第2項に規定する一定期日払いの原則によって、当該支払日を繰り下げることはできず、繰り上げて直近の労働日に支払わなければならない。

(平成13年 問3C)
【解答】×
【解説】(法24条2項)
■給与支払い日が、休日にぶつかるときに、その支払日を繰り下げても「一定期日払いの原則」に違反しない。


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