若者の意識~楽しい生活のために働き、長期雇用の下でのキャリア形成を志向~
1)新入社員の働く目的は、経済的豊かさよりも、楽しい生活を重視
以下では、若者をめぐる厳しい雇用情勢の下で、若者が仕事に関しどのように考えているかをみていくこととする。
新入社員の働く目的の推移をみると、2000(平成12)年以降、「楽しい生活をしたい」とする者の割合が大きく上昇して2012(平成24)年度には最も高い割合となり、逆に「経済的に豊かな生活を送りたい」とする者の割合は低下傾向にあり、働くことに関する最近の若者の意識は、経済的な側面よりも、自分自身が「楽しく」生活できるかどうかという点を重視していることが分かる。
また、「自分の能力をためす生き方をしたい」とする者の割合は、調査を開始した
2)会社の選択では、能力・個性の発揮や仕事の面白さを求める傾向
次に、新入社員の会社の選択理由についての推移をみると、「会社の将来性を考えて」とする者の割合は、長期的に低下傾向を示す一方、「自分の能力・個性が生かせるから」とする者の割合は上昇傾向で推移し、2012年度には、最も高い割合を占めている。
また、「仕事がおもしろいから」とする者の割合は、1990年代以降、上昇傾向で推移し、2012年度には2番目に高い割合を占めている。
先にみた働く目的のうち「自分の能力をためす生き方をしたい」が低下傾向を示していることについては、仕事を通じ何かに挑戦するという考え方が過去に比べ低下しているということであれば、長期的な職業能力の形成が懸念される。
しかしながら、これは、他の選択肢の増加に伴い相対的に低下しているものと考えられ、会社の選択理由としては、「自分の能力・個性が生かせるから」とする者の割合が最も高くなっており、若者は、仕事をしていく上で、能力形成をしていけるかどうかという点を重視しているものと考えられる。
3)長期雇用の下でのキャリア形成を志向
(独)労働政策研究・研修機構「勤労生活に関する調査」結果(1999年、2011年)によると、望ましいキャリア形成に関する若者の意識は、1999(平成11)年から2011(平成23)年にかけ、20歳代において、「一企業キャリア」(一つの企業に長く勤めるキャリア形成)を望ましいとする者の割合が上昇する一方、「複数企業キャリア」(複数の企業を経験するキャリア形成)を望ましいとする者の割合は低下している。
また、新入社員を対象としたアンケート調査においても、2008(平成20)年度以降、「同じ会社で働きたい」とする者の割合の方が、「自分に向かないと思えばすぐに転職したい」とする者の割合より高くなっている。
このように、厳しい雇用情勢が続く中、一つの企業に長く勤めキャリアを形成していくことを望む若者が増加している。