平成25年版 労働経済白書 はじめにの全文

はじめに

日本経済は、2011年に生じた東日本大震災による一時的な落ち込みを乗り越え、2012年に入り増勢を維持してきた。

 

その後、世界景気の減速等により輸出や生産が落ち込み、景気は弱い動きとなったが、2013年に入って持ち直しに転じている。

 

雇用情勢は、依然として厳しさが残るものの、このところ改善の動きがみられる。

2012年秋以降の株高の進行等を背景に、消費者心理、個人消費が持ち直しているほか、2013年の春季労使交渉では業績が改善している企業において一時金を引き上げる動きもみられる。
一方、中長期的に我が国の雇用をめぐる状況をみると、1990年代初頭のバブル崩壊後、経済成長が停滞する中で経済活動のグローバル化、本格的な人口減少と高齢化などの構造変化が急速に進行している。労働需要側の企業にとっては、成長分野の見通しが難しい、人材の確保・育成における対応が必要といった経営面の課題があり、それらへの対応が迫られている。また、賃金の弱い動きが続く中で、非正規雇用労働者の増加を始めとする就業構造の変化が起こっている。

今後、日本経済が持続的に成長し、それが労働供給側の雇用・所得の拡大を含む経済の「好循環」を実現するためには、企業と労働者の双方が構造変化に対応し、資源の少ない我が国において競争力の源泉である人材が活躍していくことがますます求められている。

このような状況を踏まえ、「平成25年版労働経済の分析」では、「構造変化の中での雇用・人材と働き方」をテーマとして、以下の3 章立ての構成で分析を行った。

第1 章「労働経済の推移と特徴」では、雇用・失業、賃金・労働時間、物価・勤労者家計、労使関係について、2012年の動向を中心に分析した。

第2 章「日本経済と就業構造の変化」では、日本経済のこれまでの経済成長とその要因をふりかえるとともに、産業・職業別の中長期的な就業構造の変化や雇用創出等の実態を、開廃業の状況を含めて分析した。また、新たな成長が期待できる分野や、我が国の雇用への影響が大きく、グローバル競争等の構造変化に特に直面している製造業に注目し、その役割と今後の競争力強化につながる人材面を始めとする課題を分析した。

第3 章「労働市場における人材確保・育成の変化」では、第2 章でみたような経済・就業構造が変化する中で、競争力の源泉である人材が企業でどのように活躍しているかとの観点から、新規学卒採用や正社員の雇用システムに関して分析したほか、近年増加した非正規雇用労働者の実態を分析した。