[平成29年度版 厚生労働白書 p89~91]
公的年金制度の体系
我が国の公的年金制度は、満20歳以上60歳未満の人は全て国民年金の被保険者となり、高齢期となれば基礎年金の給付を受ける「国民皆年金」の仕組みを採用している。
これに加えて、民間企業に勤めるサラリーマンや公務員などは、厚生年金保険に加入し、基礎年金の上乗せとして報酬比例の厚生年金の給付を受けることができるという二階建ての仕組みとなっている。
被保険者・保険料
国民年金の第1号被保険者(約1,670万人)は、20歳以上60歳未満で、自営業者や学生など、後述の第2号被保険者でも第3号被保険者でもない人々である。
第2号被保険者(約4,130万人)は、民間企業に勤めるサラリーマンや公務員などで厚生年金保険にも加入している70歳未満の人々である。
ただし、パートやアルバイトの方など就業時間が短く賃金水準が低いなどの理由により、一定の要件(週20時間以上、月額賃金8.8万円(年収換算で106万円)など)を満たさない方については、厚生年金保険は適用されない場合がある。
第3号被保険者(約915万人)は、第2号被保険者の被扶養配偶者であり20歳以上60歳未満で、かつ、第2号被保険者に該当しない人々である。
なお、扶養されているかどうかの基準は、被扶養配偶者の年収が130万円未満であることである。
第1号被保険者が納める国民年金の保険料は定額(2017(平成29)年度は毎月16,490円)である。
所得が低くて保険料が支払えない場合は、被保険者本人からの申請に基づき、所得に応じて保険料の全額、4分の3、半額、4分の1が免除される制度がある。
また、学生については、卒業後に在学中の保険料を納めることができる学生納付特例の制度がある。
第2号被保険者は、国民年金の保険料を納付することを要しないが、厚生年金の保険料として、被保険者の給与(標準報酬月額)に定率の保険料率(2017年9月以降18.3%)を掛けた額について、その半分を事業主が負担し、残りの半分を被保険者本人が負担することとされており、厚生年金の保険料を管理する厚生年金勘定から基礎年金の給付に要する費用が拠出されている。
第3号被保険者についても、第2号被保険者と同様に、国民年金の保険料を納付することを要せず、基礎年金の給付に要する費用は、上記の厚生年金勘定から拠出されているため、第2号被保険者が納める保険料によって負担されている。
保険給付・財源
国民年金は、保険料を納めた期間などが10年以上(2017年7月までは25年以上)あると、原則として、65歳になると老齢基礎年金を受け取ることができる。
給付額は保険料を納めた期間などの長さに応じて計算することとされており、その期間が40年以上の場合は満額の老齢基礎年金(2017年度で64,941円)を受け取ることができる。
なお、保険料を全額免除されていた期間については、2分の1(2009(平成21)年度以前の免
除期間は3分の1)として計算することとされており、40年間通じて全額免除の場合には、64,941円×1/2の年金額となる。
厚生年金は、老齢基礎年金の受給資格を有する人が、原則として、65歳になると老齢厚生年金を受け取ることができる。
給付額は厚生年金保険に加入していた期間の給与(標準報酬月額)と加入期間に応じて計算することとされており、例えば、男子賃金の平均額で40年間厚生年金保険に加入していた場合には、約91,000円を受け取ることができる。
なお、支給開始年齢については、現在、男性は2024年度、女性は2029年度までかけて、段階的に65歳まで引き上げている途上にある。
このほかに、被保険者が病気やけがなどにより障害を負ったときには、障害基礎年金、障害厚生年金が支給され、被保険者や年金受給者が死亡したときには、遺族基礎年金、遺族厚生年金が遺族に対して支給される。
年金給付に必要な費用は、保険料、国庫及び積立金の運用収入によりまかなわれている。
なお、2009年度以降は、基礎年金の給付に必要な費用のうち、国庫が負担する割合が3分の1から2分の1に引き上げられている。
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