労働施策総合推進法
2019年 社会保険労務士試験の目玉である「働き方改革」に関連する改正点です。
まずは、働き方改革の基本法に位置付けられている「労働施策総合推進法」から確認していきます。
この「労働施策総合推進法」は、従来の「雇用対策法」の名称が変更になったということで、
平成30年7月9日に施行されています。
今回の改正により、「対策」から「推進」へと名称が変化しています。
雇用対策法⇒労働施策総合推進法
「雇用対策法」と「労働施策総合推進法」の目的条文を確認していきます。
雇用対策法(法1条 目的)
① この法律は、国が、少子高齢化による人口構造の変化等の経済社会情勢の変化に対応して、雇用に関し、その政策全般にわたり、必要な施策を総合的に講ずることにより、労働市場の機能が適切に発揮され、労働力の需給が質量両面にわたり均衡することを促進して、労働者がその有する能力を有効に発揮することができるようにし、これを通じて、労働者の職業の安定と経済的社会的地位の向上とを図るとともに、経済及び社会の発展並びに完全雇用の達成に資することを目的とする。
② この法律の運用に当たっては、労働者の職業選択の自由及び事業主の雇用の管理についての自主性を尊重しなければならず、また、職業能力の開発及び向上を図り、職業を通じて自立しようとする労働者の意欲を高め、かつ、労働者の職業を安定させるための事業主の努力を助長するように努めなければならない。 |
労働施策総合推進法(法1条 目的)
① この法律は、国が、少子高齢化による人口構造の変化等の経済社会情勢の変化に対応して、労働に関し、その政策全般にわたり、必要な施策を総合的に講ずることにより、労働市場の機能が適切に発揮され、労働者の多様な事情に応じた雇用の安定及び職業生活の充実並びに労働生産性の向上を促進して、労働者がその有する能力を有効に発揮することができるようにし、これを通じて、労働者の職業の安定と経済的社会的地位の向上とを図るとともに、経済及び社会の発展並びに完全雇用の達成に資することを目的とする。
② この法律の運用に当たっては、労働者の職業選択の自由及び事業主の雇用の管理についての自主性を尊重しなければならず、また、職業能力の開発及び向上を図り、職業を通じて自立しようとする労働者の意欲を高め、かつ、労働者の職業を安定させるための事業主の努力を助長するように努めなければならない。 |
下記の2か所になります。
雇用対策法 |
労働施策総合推進法 |
雇用に関し |
労働に関し |
労働力の需給が質量両面にわたり均衡することを促進して |
労働者の多様な事情に応じた雇用の安定及び職業生活の充実並びに労働生産性の向上を促進して |
「雇用」という文言から「労働」という名称に変更することにより、「働き方改革の基本法」に位置付けたことを明確にしています。
合わせて、従来は「労働力」というどちらかというと、国や事業者の目線での文言でしたが、
改正により、「労働者の多様な事情に応じた雇用の安定及び職業生活の充実並びに労働生産性の向上を促進して」という「労働者の働き方」を前面に押し出した言い回しになっています。
その他の改正点として、追加された条文です。
第4条(国の施策)第9項…治療と仕事の両立支援に関わる事項
疾病、負傷その他の理由により治療を受ける者の職業の安定を図るため、雇用の継続、離職を余儀なくされる労働者の円滑な再就職の促進その他の治療の状況に応じた就業を促進するために必要な施策を充実すること。 |
第6条 (事業主の責務)
事業主は、その雇用する労働者の労働時間の短縮その他の労働条件の改善その他の労働者が生活との調和を保ちつつその意欲及び能力に応じて就業することができる環境の整備に努めなければならない。 |
「労働時間の短縮その他の労働条件の改善」や「生活との調和」という文言で、「働き方改革」を推進する内容の条文が追加になっています。
法1条の目的条文は、主語が「国が」になっていますが、法6条は、「事業主」が主語になっていることにも注意してください。
労働施策基本方針
「労働施策総合推進法」では、労働者がその有する能力を有効に発揮することができるようにするために必要な労働に関する施策の総合的な推進に関する基本的な方針を定めなければならないこととされています。
これに基づき、労働政策審議会の議論を踏まえ、「労働施策基本方針」が平成30年12月28日閣議決定されています。
この方針には、働き方改革実行計画に規定されている施策を中心とし、労働施策に関する基本的な事項、その他重要事項などを盛り込まれています。
2019年度の社会保険労務士試験の目玉である「働き方改革」の重要な考え方になるので、しっかりと確認してください。
「はじめに」を掲載します。
我が国においては、景気は緩やかに回復し、経済の好循環が着実に進展するとともに、雇用情勢も着実に改善をしている。平成29年の全国の有効求人倍率は1.50倍と約44年ぶりの高い水準となり、完全失業率は 2.8 %と約24年ぶりの低い水準となっている。
各都道府県の有効求人倍率をみても、全ての都道府県において1倍を超え、雇用情勢の改善が全国的に進んでいる。
また、我が国の総人口は、平成20年の 1 億2800万人をピークに減少傾向にあるが、 女性の活躍推進や高齢者の雇用促進等に関する各種施策の推進により、女性や高齢者を中心に就業率は上昇しており、平成24年から平成29年にかけては、景気の回復ともあいまって就業者数は約 250 万人増加している。
このように雇用情勢が着実に改善し労働参加が進展する一方で、就業者数の増加を上回る旺盛な求人ニーズにより、企業の人手不足感は強まっている。特に、中小企業・小規模事業者(以下「中小企業等」という 。) においては、中核人材の確保ができない場合もあり、我が国の雇用を広く支える中小企業等において大きな問題となっている。
長期的にみると、我が国の経済成長の隘路の根本には、少子高齢化・生産年齢人口の減少といった構造的な問題や生産性向上の低迷等の問題が存在する。また、AI等の技術革新は、仕事を取り巻く環境や働き方に大きな変化をもたらし得るものである。
こうした課題を克服し経済成長を実現するためには、誰もが生きがいを持ってその有する能力を最大限に発揮できる社会を創り、イノベーションの促進等を通じた生産性の向上と、労働参加率の向上を図ることが必要である。
そのため、平成29年3月28日の働き方改革実現会議において、労働者がそれぞれの事情に応じた多様な働き方を選択できる社会を実現する働き方改革の総合的な推進に向けて、「働き方改革実行計画」(平成29年3月28日働き方改革実現会議決定。以下「実行計画」という 。) を決定し、長時間労働をはじめとする我が国の雇用慣行における諸問題に対して、改革実現の道筋を示したところである。
労働者がそれぞれの事情に応じた多様な働き方を選択できる社会を実現する働き方改革を推進するため、時間外労働の限度時間の設定、短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者と通常の労働者との間の不合理な待遇の相違の禁止等を目的として、第 196回国会において、働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律(平成30年法律第71号。以下「働き方改革関連法」という 。) が成立し、働き方改革関連法第3条の規定により、雇用対策法(昭和41年法律第 132 号)が労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(昭和41年法律第 132号。以下「労働施策総合推進法」という 。) に改正された。
労働施策総合推進法第10条第1項においては、国は、労働者がその有する能力を有効に発揮することができるようにするために必要な労働に関する施策の総合的な推進に関する基本的な方針を定めなければならないこととされている。
本方針は、同項の規定に基づき、働き方改革の意義やその趣旨を踏まえた国の施策に関する基本的な事項等について示すものである。 |