「令和元年版 労働経済の分析」(労働経済白書)を公表
令和元年9月27日
~分析テーマは「人手不足の下での『働き方』をめぐる課題について」~
はじめに
我が国の経済は、度重なる自然災害や、通商問題の動向及び中国経済の先行き等に関する不確実性等の影響があったものの、企業収益や雇用・所得環境が改善し、設備投資や個人消費が持ち直しの動きを示す中、緩やかに回復している。
そのような経済情勢の中、雇用情勢については、完全失業率は 2018年度平均で 2.4%と 1992年度以来 26年ぶりの低水準、有効求人倍率 は 2018年度平均で 1.62倍と 1973年度以来 45年ぶりの高水準となるなど着実に改善が続いている。
また、雇用者数は増加しており、雇用形態別にみると、不本意非正規雇用労働者数は減少を続け、正規雇用労働者数が4年連続で増加している。
就業者数も6年連続で増加するなど、 女性や高齢者等の労働参加が進んだ結果、労働力率は上昇傾向にある。
さらに、名目賃金は引き続き増加している。 「令和元年版 労働経済の分析」では、第Ⅰ部「労働経済の推移と特徴」において、こうした 2018年度の労働経済をめぐる動向を分析するとともに、第Ⅱ部では「人手不足の下での「働き方」をめぐる課題について」と題して、人手不足下における「働き方」の在り方について、「働きやすさ」と「働きがい」の観点から分析を行っている。
我が国では、景気や雇用情勢が 改善し、就業者数が増加を続けているものの、2008年をピークに人口減少局面に入っており、 将来的にも生産年齢人口や就業者数の大幅な減少が予想されている。
こうした中で人手不足感が高まるとともに、実体経済にも影響を与える人手不足の問題が顕在化し、職場における働きやすさや働きがいに負の影響を与えている可能性もある。
こうした懸念を払拭するためには、 高齢者も若者も、女性も男性も、誰もが活躍できる一億総活躍社会の実現に向けた取組が重要であり、そのためには働く方の視点に立って、一人ひとりの意思や能力、個々の抱える事情に応じた多様で柔軟な働き方を選択できるよう「働き方改革」を進めていく必要がある。
その上で、よりよい「働き方」を実現することで、仕事のパフォーマンスを向上させながら、就労を望む誰もが安心していきいきと働き続けられる環境整備を推進し、これが我が国企業にとっての成長、ひいては、日本経済のさらなる発展に結びついていくことが望ましい。
第Ⅱ部第1章「我が国を取り巻く人手不足等の現状」では、我が国が直面している人手不足の現状や今後の展望について様々な観点から特徴を整理するとともに、人手不足の緩和に向けた企業の取組状況、人手不足が企業経営や働く方の職場環境に与える影響を概観している。
その中で、第2章以降に行う検討の視座として、雇用管理の改善等による「働きやすさ」や「働きがい」の向上を通じて、従業員の定着率の改善や離職率の低下を図り、人手不足の緩和に資するような取組の重要性について指摘した。
第Ⅱ部第2章「就労を望む誰もが安心して働き続けられる「働きやすさ」の実現に向けて」 では、職場環境の「働きやすさ」の現状やその要因を明らかにし、雇用管理やワーク・ライ フ・バランスに資する取組が「働きやすさ」を向上させる効果について分析するとともに、これらの取組が従業員の離職率、新入社員の定着率、求人募集の充足率など、人手不足に関係する指標に与える影響について考察する。
第Ⅱ部第3章「「働きがい」をもって働くことのできる環境の実現に向けて」では、「ワーク・ エンゲイジメント」という概念を活用しながら、我が国における「働きがい」をめぐる現状について明らかにするとともに、「働きがい」を向上させることで得られる可能性のある効果や、「働きがい」を向上させる可能性のある企業の雇用管理・人材育成の取組内容等について考察した。