十和田観光事件
今回は、判例の学習方法について、十和田観光事件をもとに解説を行います。
判例自体、難解な法律用語と難しい言い回しで、なかなか理解できませんが、深追いする必要ありません。
判例の対策は、2つ。
(1)過去出題された判例を中心に学習する。
(2)結論(原告もしくは被告のどちらが勝訴したのか)を見極める。
例えば、社会保険労務士試験で頻繁に出題される「十和田観光事件」の判例です。
論旨は、要するに、原判決が被上告人の十和田市議会議員就任が上告人会社の業務逐行を著しく阻害する虞れがあるかどうかについて、何等審理判断を加わえることなく、被上告人の懲戒解雇を無効と判断したことは、労働基準法七条の解釈適用を誤まり、審理不尽の違法に陥つたものであるという。 原判決(およびその引用する第一審判決)の確定した事実によれば、被上告人は昭和二九年四月一〇日上告人会社に雇い入れられたものであるが、昭和三四年四月三〇日施行の十和田市議会議員選挙に当選し、上告人会社の承認を得ないで、同市議会議員に就任したところ、上告人会社は、右は従業員が会社の承認を得ないで公職に就任したときは懲戒解雇する旨の就業規則(一六条二号、八五条一三号、八四条六号)に該当するとして、同年五月一日付で被上告人を懲戒解雇に附した、というのである。 (以下略) |
社労士試験に関していうと上記の文章は、読む必要がありません。
難解な法律用語と難しい言い回しの判例に深入りする必要は全くありません。
社会保険労務士の試験は、判例のプロセスよりも事実にポイントを置きます。
判例がどのように下されたか?
つまり、事実だけを押さえたら十分です。
まず、最初に確認することは、
「原告(裁判を起こした方)と被告(裁判を起こされた方)のどちらが勝訴したのか」がポイントです。
それでは、十和田観光事件の概略です。
平成23年 問1C
公職の就任を使用者の承認にかからしめ、その承認を得ずして公職に就任した者を懲戒解雇に付する旨の就業規則条項は、公民権行使の保障を定めた労働基準法第7条の趣旨に反し、無効のものと解すべきであるとするのが最高裁判所の判例である。 |
十和田観光事件のポイントは、
「会社に在籍している労働者が勝手に議員になった場合に懲戒解雇にするという内容の就業規則は無効か有効か」が争われた事件です。
決果は、労働者の勝訴です。
つまり、「会社に在籍している労働者が勝手に議員になった場合に懲戒解雇にするという内容の就業規則は無効」というのが判例の趣旨になります。
上記の結論を加味すれば、答えは正解になります。
繰り返しです。
学習を進める中で、関連する判例に当たることがありますが、社労士の本試験に出題実積のない判例は、学習する必要はありません。
(キリがありません。)
まずは、過去出題された判例をしっかり押さえることです。
ただし、大きな社会的な問題になったような判例(例えば、過労死の問題やマタハラ等関連の判例)が直近に出題されたケースはありますが、「大きな社会的な問題に関する裁判」ということでアンテナを張って置く必要はあります。