2020年対策 労働経済白書 問題編
(問題は、労働経済白書の概要をそのまま掲載しており、答えはすべて正解です)
■雇用情勢の動向
【問題】雇用情勢の動向について、我が国経済は緩やかな回復が続く中、2018年度の完全失業率は2.4%と26年度以来ぶりの低い水準、有効求人倍率は1.62倍と1973年度以来45年ぶりの高い水準となっており、雇用情勢は着実に改善している。
【問題】地域別の完全失業率は、全てのブロックにおいて低下しており、国際的にも低い水準で推移している。
【問題】雇用者数の推移をみると、正規雇用の職員・従業員は4年連続で増加しており、2018年では3,476万人となった。
また、就職(内定)率は、高校・大学新卒者ともに、非常に高い水準で推移している。
【問題】雇用人員をみると、人手不足感が高まっており、 2019年3月調査では、全産業・製造業・非製造業のいずれもバブル期に次ぐ人手不足感となった。
【問題】雇用形態別に労働者の過不足をみると、パートタイムに比べて正社員等で人手不足感が高まっている。
■賃金について
【問題】2018年度の現金給与総額(月額)は、一般労働者の所定内給与、特別給与の増加がプラスに寄与したことなどにより、5年連続の増加となった。
【問題】一般労働者の名目賃金及びパートタイム労働者の時給は、引き続き増加している。
【問題】一般労働者に占める高齢者の比率は、一般労働者の現金給与総額に対してマイナスに寄与しているが、高齢者の賃金水準は、全体との格差が縮小している。
【問題】国民全体の稼ぎである総雇用者所得の動向をみると、女性や高齢者の労働参加の進展によるプラスの寄与(雇用者数)は大きくなっている。
■人手不足の下での「働き方」をめぐる課題
【問題】多くの労使が、人手不足による職場環境への影響を感じており、「働きやすさ」の毀損だけでなく、「働きがい」の低下を実感している。
【問題】「働きがい」の低下は、働く方の疲労・ストレスを過度に蓄積し、仕事のパフォーマンスを低下させ、企業経営にも支障をきたす可能性がある。
【問題】「働きがい」を向上させるためには、その前提として、「働きやすさ」の基盤がしっかりと構築されていることが重要であり、「働き方改革」を両観点から、より一層推進していくことで、労使の共通課題である人手不足を緩和していくことが肝要である。
■人手不足の現状
【問題】人手不足感が高まっており、特に中小企業で顕著。三大都市圏以外も三大都市圏と同様に高まっている。産業別にみると、正社員では製造業・建設業、パートタイムでは生活関連サービス業等で特に強くなっている。
■人手不足緩和策の取組状況
【問題】3年前から現在までに、人手不足を緩和するための対策に取り組んできた(近く取り組む予定を含む)企業は、全体の86.0%を占めている中、「製造業」「教育・学習支援業」「卸売業・小売業」等は、全産業の平均取組割合を下回っている。
【問題】企業規模別に取組状況をみると、相対的に小規模の企業の方が取組割合が低いものの、「従業員300人以下の企業」「従業員50人以下の企業」ともに8割を超える企業が対策に取り組んでいる。
■人手不足の緩和に向けた企業の取組と人手不足を感じる理由
【問題】企業の人手不足の緩和に向けた取組内容を見ると、新規求人や中途採用などの労働市場からの「外部調達」、雇用継続や正社員登用などの企業内における「内部調達」等の実施率が比較的高い。一方で、「雇用管理の改善」や「従業員への働きがいの付与」といった、職場環境の改善に着目した取組はまだ十分に浸透していない。
【問題】企業が人手不足を感じている理由については、「新規の人材獲得が困難になっている」や「従業員の自発的な離職の増加」を挙げる企業が多い。
■新規人材確保が困難な企業における求人募集の状況
【問題】人手不足企業のうち、新規人材の確保が困難な企業における、求人募集をした際の状況をみると、「募集しても、応募がない」企業が最も多く、特に、「三大都市圏以外」の企業でその傾向が強い。
【問題】産業別に「募集しても、応募がない」と回答する企業をみると、「宿泊業・飲食サービス業」「建設業」「医療㻘福祉」等における回答割合が高い。
■就業時間の増減希望
【問題】正規雇用労働者では、「週就業時間35~42時間」の者であっても、就業時間の増加より、減少を希望している者の方が多い。
■「業務プロセス見直しによる効率化」の実施状況
【問題】人手不足を緩和するために、「業務プロセスの見直しによる効率化の強化」に取り組んできた企業は、「情報通信業」「サービス業(他に分類されないもの)」「学術研究,専門・技術サービス業」「製造業」等で相対的に多い。
【問題】人手不足感が相対的に高まっている製造業を中心に、「労働生産性の向上」「人手不足の解消」に効果があったとする企業が多い。
■「省力化・合理化投資」の実施状況
【問題】人手不足を緩和するために「省力化・合理化投資」に取り組んできた企業は、「製造業」「卸売業、小売業」等で相対的に多い。
【問題】人手不足感が相対的に高まっている製造業を中心に、「労働生産性の向上」「人手不足の解消」に効果があったとする企業が多い。
■人手不足が会社経営・職場環境に及ぼす影響
【問題】人手不足は、多くの企業の経営に影響を及ぼしている可能性がある。具体的な影響としては、「既存事業の運営への支障」「技術・ノウハウの伝承の困難化」などが指摘される。
【問題】人手不足は、多くの企業の職場環境にも影響を及ぼしている可能性がある。具体的な影響としては、「残業時間の増加、休暇取得数の減少」「従業員の働きがいや意欲の低下」などが指摘されており、労働者・企業ともに「働きやすさ」や「働きがい」の低下を実感している可能性が示唆される。
■職場の「働きやすさ」に対する満足感
【問題】働きやすさに対する満足感は、「いつも感じる」又は「よく感じる」労働者の割合が、35歳~64歳の男性及び、45歳~64歳の女性において低くなっている。
【問題】65歳以降も働き続けている労働者は、男女ともに、「いつも感じる」又は「よく感じる」労働者の割合が、他の年齢階級に比べて高くなっている。
■「働きやすさ」の向上のために重要な雇用管理
【問題】男女、年齢を問わず、働きやすさの向上には「職場の人間関係やコミュニケーションの円滑化」が必要であると考えている労働者の割合が最も多く、次いで「有給休暇の取得促進」、「労働時間の短縮や働き方の柔軟化」が多くなっている。
【問題】15~44歳の女性にとっては「仕事と育児との両立支援」も働きやすさに関する重要な要素となっている。
■「働きやすさ」・離職率・定着率の改善に有用な雇用管理
【問題】企業では、有給休暇の取得促進や労働時間の短縮や働き方の柔軟化などの雇用管理が、従業員の働きやすさの向上、離職率の低下、新入社員の定着率の上昇につながっている可能性がある。
■中小企業の特徴と「働きやすさ」・離職率の改善につながる雇用管理
【問題】100人以下の企業に所属する正社員の方が裁量度が高く、家族・子供の急病などによる「急な休暇取得がいつも出来ている」と感じている者の割合が高く、女性と高齢者の割合が高い。
【問題】 中小企業においても、有給休暇の取得促進などの雇用管理が、働きやすさや離職率の改善につながる可能性がある。
■企業規模別にみた働き方改革の取組状況
【問題】働き方改革の取組を見ると、企業規模に関わらず「長時間労働削減のための労働時間管理の強化」「残業削減の推進」「休暇取得の促進」が多い。
【問題】企業規模が小さいほど現時点での実施率は低下する傾向にある一方で、今後新たに実施する予定の事業所の割合をみると、企業規模が小さいほど大きくなる傾向にあり、働き方改革の実現に向けた中小企業に対する継続的な支援が重要である。
■「働きがい」について
【問題】「ワーク・エンゲイジメント」は、「仕事から活力を得ていきいきとしている」(活力)、 「仕事に誇りとやりがいを感じている」(熱意)、「仕事に熱心に取り組んでいる」(没頭)の3つが揃った状態として定義される。
【問題】ワーク・エンゲイジメントは、バーンアウト(燃え尽き)の対極の概念となっている。
■正社員の「働きがい」の概況
【問題】「働きがい」を示すワーク・エンゲイジメント・スコア(以下、「WEスコア」という。)をみると、正社員全体では3.42となっており、「熱意」が3.92と高い一方で、「活力」が2.78と低くなっている。性別でみると、女性はスコアがやや高く、「活力」が男性より低いが、「熱意」「没頭」が男性より高い。また、年齢別にみると、若い社員のスコアが低い傾向にある。さらに、職位・職責が高くなるほど、スコアは高くなっていく傾向にある。
【問題】正社員と限定正社員を比べると、限定正社員の「働きがい」は相対的に高い可能性が示唆された。
■非正規雇用労働者の「働きがい」の概況
【問題】非正規雇用に就いた理由によって、「働きがい」には大きな差が生じている。正規雇用と比較すると、不本意選択の方では、労働者派遣事業所の派遣社員や契約社員・嘱託、男性、35~44歳を中心として「働きがい」の高い状態の方の割合が低い水準となっているが、大多数を占める不本意選択以外の方では、同割合が高い水準となっている。
■「働きがい」と定着率・離職率
【問題】 新入社員の定着率(入社3年後)の上昇や従業員の離職率の低下は、働きがいと正の相関関係があることがうかがえる。
【問題】人手不足企業においてもこうした傾向がみられ、従業員の働きがいが高い場合、人手不足企業であっても定着率が上昇している企業や離職率が低下している企業が多い。
■「働きがい」と労働生産性
【問題】個人の労働生産性の向上は、働きがいと正の相関関係があることがうかがえる。
【問題】企業の労働生産性(マンアワーベース)の水準は、働きがいと正の相関関係があることがうかがえる。
■「働きがい」と自発性・積極性・顧客満足度
【問題】仕事に対する自発性や他の従業員に対する積極的な支援(役割外のパフォーマンス)は、働きがいと正の相関関係があることがうかがえる。
【問題】企業が認識する顧客満足度に関する関係をみると、働きがいと正の相関関係があることがうかがえる。
■「働きがい」とストレス・疲労
【問題】仕事中の過度なストレスや疲労は、働きがいと負の相関関係があることがうかがえる。一方で、ワーカホリックな状態は、働きがいと正の相関関係があることがうかがえる。
【問題】働く方のストレス・疲労を軽減するためには、働きがいの向上が重要であることが示唆されるが、働きがいとワーカホリックな状態とは弱い正の相関が確認される。したがって、企業は、ワーカホリックな労働者を称えるような職場環境を見直す等、働き方をめぐる企業風土の在り方についても検討していく必要がある。
■「働きがい」と職業人生の長さに関する所感
【問題】「職業人生は長過ぎない方が望ましい」と考える者が約12.6%である一方で、「職業人生は可能な限り長い方が望ましい」と考える者が約63.0%となっており、後者の割合が高い。
【問題】いずれの年齢階級においても、働きがいが低い者と比較し、働きがいが高い者では、「職業人生は可能な限り長い方が望ましい」と感じる労働者が多い。
■「働きがい」の高い労働者の主な仕事に対する認識
【問題】 「仕事を通じて、成長できている」「自己効力感(仕事への自信)が高い」「勤め先企業でどのようにキャリアを築いていくか、キャリア展望が明確になっている」等の認識を持つ頻度の高さは、働きがいと正の相関がある可能性が推察される。
■「働きがい」の高い者の勤め先企業で実施されている雇用管理
【問題】雇用管理については、「職場の人間関係やコミュニケーションの円滑化」「労働時間の短縮や働き方の柔軟化」「業務遂行に伴う裁量権の拡大」等を実施することにより、労働者の働きがいが向上する可能性が推察される。
■「働きがい」の高い者の勤め先企業で実施されている人材育成
【問題】人材育成については、「指導役や教育係の配置(メンター制度等)」「キャリアコンサルティング等による将来展望の明確化」「企業としての人材育成方針・計画の策定」等を実施することにより、労働者の働きがいが向上する可能性が推察される。
■仕事を通じた成長実感と業務上の目標達成の難易度
【問題】仕事を通じた成長実感の向上といった観点からみると、業務上の目標管理に当たっては、達成にある程度の努力を要する難易度で目標設定されていることが肝要であることが示唆された。
【問題】業務上の目標達成の難易度に関して、女性、29歳以下や60歳以上、事務職(一般事務等)を中心に、企業の想定と比較し、社員の認識している目標達成の難易度が低い状況になっている可能性がある。
■成長実感とフィードバック
【問題】仕事を通じた成長実感の向上といった観点からは、日常業務に対する上司からのフィードバックが実施され、その頻度が相対的に高いこと、その上で、手法としては、働く方の具体的な行動について、行動した内容の重要性や意義について説明しながら、行動した直後に誉めることが肝要であることが示唆された。
■キャリア展望と労使間の意思疎通の機会
【問題】勤め先企業におけるキャリア展望の明確性を高める観点からは、以下の点が肝要であることが示唆された。
【問題】日常業務の中で、管理職と今後のキャリア展望について話し合いが実施され、その頻度が相対的に高いこと
【問題】現在担当している業務の意義・重要性だけでなく、将来を見据えながら、取得が必要になる資格・技能、向上させる必要があるスキル、従業員が担当を希望している業務の意義・重要性について話し合うこと
■若者のキャリア展望等とロールモデルとなる先輩社員
【問題】我が国において、ロールモデルとなる先輩社員がいる39歳以下の若者は、必ずしも多い状況にはない。
【問題】 働く方自身のロールモデルとなる先輩社員をみつけるためには、その前提として、働く方自身の勤め先企業におけるキャリア展望が明確になっていることが肝要であることが示唆された。
【問題】企業が想定している以上に、働く方はロールモデルとなる先輩社員がいるといった所感を持つことができていない状況にある可能性に留意しながら、ロールモデルの在り方について、労使でしっかりと話し合っていくことが重要である。
■管理職の「働きがい」と登用機会の公平性等
【問題】「勤め先での管理職登用の機会は、性別・学歴・勤続年数・年齢等に関わらず、幅広い多くの人材にあると感じる」「性別にかかわりなく、社員の能力発揮を重視する企業風土があると感じる」といった所感を管理職がもつことのできる環境を推進することで、管理職の働きがいを向上させることのできる可能性が示唆される。
【問題】今後、管理職の実感を担保するという観点から、管理職の登用機会の公正性や性別にかかわりなく、社員の能力発揮を重視する企業風土の醸成方法について、改めて労使で再考してみることが重要だと考えられるが、その際には、労使間の認識にギャップが生じていることに留意が必要である。
■非正規雇用の方の働きがいと公正な評価
【問題】自分と同様の働き方をしている正規雇用の方がいたと認識している非正規雇用の方の割合は、約35.1%となっている。
【問題】非正規雇用の方であって、自分と同様の働き方をしている正規雇用の方への評価と比較し、自分の働き方に対する評価が公正だと感じた方は、同評価が不合理だと感じた方と比較し、働きがいが高い状態にある者の割合が高いことが分かる。
■「働きがい」と「休み方」(リカバリー経験)の関係性
【問題】「心理的距離」 「コントロール」 「リラックス」「熟達」といったリカバリー経験(休み方)が出来ている場合には、仕事中の過度なストレスや疲労から回復し、その後、再び就業する際に、働く方の働きがいや労働生産性の向上を実現させる可能性が示唆された。
【問題】こうした効果は、「労働強度が高い人手不足企業」において相対的に強い可能性があり、「労働強度が高い人手不足企業」こそ、従業員がリカバリー経験(休み方)をできるように様々な支援を講じていくことが有用だと考えられる。
■我が国における「休み方」(リカバリー経験)の概況
【問題】「心理的距離」(休暇時に仕事のことを忘れる等)については、約33.9%が「出来ていない」と自己評価しており、「リラックス」や「コントロール」における同評価と比較すると、高い水準にあることが分かる。
【問題】「心理的距離」「リラックス」「コントロール」については、男性、30歳台~50歳台において実施割合が低い状況にあることがうかがえる。また、「熟達」については、女性、若者で実施割合が低い状況にある。
■仕事と余暇時間の境目をマネジメントする能力(バウンダリー・マネジメント)
【問題】仕事と余暇時間の境目のマネジメント(バウンダリー・マネジメント)が「出来ている」と自己評価された方は、働きがいが高い者の構成比が高い。
【問題】 働きがいが高い者が心掛けている取組には、「家族や恋人と過ごす」といった内容に加えて、「自己管理力を高める」「普段からプライベートの話を職場で出来る人間関係を構築する」「余暇時間に仕事が気にならないよう、計画的に業務処理する」といった業務遂行に関連する内容もある。