「労働契約法のあらまし」及び「労働基準法と労働契約法の違い」に関する内容です。
まず、労働契約法から。
労働契約法(平成20年3月施行)は、労1において毎年出題されています。
(過去10年間1問で出題)
厚生労働省が作成した「労働契約法のあらまし」に労働契約法制定の趣旨が記載されているので参考に確認してください。
厚生労働省発行 「労働契約法のあらまし」
労働契約法は、平成20年3月から施行され、平成24年8月に一部が改正されました。 このパンフレットでは、労働契約法について、条文ごとにその趣旨や内容を解説しています。 労働契約法の趣旨や内容を踏まえ、使用者と労働者の皆さまでよく話し合っていただき、お互いの十分な理解と協力の下に、安心・納得して働けるようにしましょう。 |
法制定の趣旨等 (1) 背景及び趣旨 労働関係を取り巻く状況をみると、就業形態が多様化し、労働者の労働条件が個別に決定され、又は変更される場合が増加するとともに、個別労働関係紛争が増加しています。 しかしながら、我が国においては、最低労働基準については労働基準法に規定されているが、個別労働関係紛争を解決するための労働契約に関する民事的なルールについては、民法及び個別の法律において部分的に規定されているのみであり、体系的な成文法は存在していませんでした。
このため、個別労働関係紛争が生じた場合には、それぞれの事案の判例が蓄積されて形成された判例法理を当てはめて判断することが一般的となっていましたが、このような判例法理による解決は、必ずしも予測可能性が高いとは言えず、また、判例法理は労働者及び使用者の多くにとって十分には知られていないものでした。
一方、個別労働関係紛争の解決のための手段としては、裁判制度に加え、 平成13年10月から個別労働関係紛争解決制度が、 平成18年4月から労働審判制度が施行されるなど、手続面における整備が進んできたところです。
このような中、個別の労働関係の安定に資するため、労働契約に関する民事的なルールの必要性が一層高まり、今般、労働契約の基本的な理念及び労働契約に共通する原則や、判例法理に沿った労働契約の内容の決定及び変更に関する民事的なルール等を一つの体系としてまとめるべく、労働契約法が制定されました。
労働契約法の制定により、労働契約における権利義務関係を確定させる法的根拠が示され、労働契約に関する民事的なルールが明らかになり、労働者及び使用者にとって予測可能性が高まるとともに、労働者及び使用者が法によって示された民事的なルールに沿った合理的な行動をとることが促されることを通じて、個別労働関係紛争が防止され、労働者の保護を図りつつ、個別の労働関係の安定に資することが期待されるものです。
(2) 労働基準法及び個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律との関係 労働基準法は、罰則をもって担保する労働条件の基準(最低労働基準)を設定しているものですが、労働契約法は、これを前提として、労働条件が定められる労働契約について、合意の原則その他基本的事項を定め、労働契約に関する民事的なルールを明らかにしているものであり、その締結当事者である労働者及び使用者の合理的な行動による円滑な労働条件の決定又は変更を促すものです。
また、労働基準法については労働基準監督官による監督指導及び罰則により最低労働基準の履行が確保されるものですが、労働契約法については労働基準監督官による監督指導及び罰則による履行確保は行われず、法の趣旨及び内容の周知により、また、労働契約法に規定する事項に関する個別労働関係紛争について、個別労働関係紛争の迅速かつ適正な解決を図ることを目的とする個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律(平成13年法律第112号)による総合労働相談コーナーにおける相談、都道府県労働局長による助言及び指導、紛争調整委員会によるあっせん等が行われ、その防止及び早期解決が図られることにより、法の趣旨及び内容に沿った合理的な労働条件の決定又は変更が確保されることを期するものです。 |
以上 厚生労働省の「労働契約法のあらまし」より
以下は、労働基準法と労働契約法の違いに関するまとめです。
労働基準法 |
労働契約法 |
昭和22年施行 |
平成20年施行 |
労働者の生存権を保障するために労働条件の基準を定めた法律 |
労働者と使用者の間で結ばれる労働契約の基本原則を定めた法律 |
強行法規 |
任意法規 |
罰則により取り締まる性質 |
・罰則はなく、労使トラブルについては、労働審判などを利用し解決 ・判例をベースに民事的なルールをまとめた法律 |
➀労働条件は、労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきものでなければならない。 ②労働基準法で定める労働条件の基準は最低のものであるから、労働関係の当事者は、この基準を理由として労働条件を低下させてはならないことはもとより、その向上を図るように努めなければならない。 |
法1条(目的) 労働契約法は、労働者及び使用者の自主的な交渉の下で、労働契約が合意により成立し、又は変更されるという合意の原則その他労働契約に関する基本的事項を定めることにより、合理的な労働条件の決定又は変更が円滑に行われるようにすることを通じて、労働者の保護を図りつつ、個別の労働関係の安定に資することを目的とする。 |