第3節 労働力と働き方の動向(p23)
【労働力人口や就業者数は、人口減少下にあっても、女性や高齢者の就業率上昇により、1990年代後半の水準を維持】
第1節でみたように既に我が国の人口は2008(平成20)年をピークに減少に転じているが、女性の活躍推進や高齢者の就労促進等に関する各種施策の推進により、女性や高齢者を中心に就業率が上昇している。
1989(平成元)年と2019(令和元)年の就業者数を性・年齢別に比較すると、25~39歳男性が大きく減少しているのに対して同年齢の女性は約1割増加し、65歳以上の男女については大きく増加している。こうした女性と高齢者の就業率の上昇を受けて、労働力人口や就業者数は、1990年代後半の水準を維持している。
【就業者数の長期的な減少は不可避と考えられるが、医療福祉分野での人材確保や活力ある経済の維持を考えると女性、高齢者等をはじめとした一層の労働参加が不可欠】(p26)
今後の労働力人口・就業者数については、厚生労働省雇用政策研究会における「労働力需給推計」において、成長実現・労働参加進展シナリオ(経済成長と労働参加が進むケース)・ベースライン・労働参加漸進シナリオ(経済成長と労働参加が一定程度進むケース)・ゼロ成長・労働参加現状シナリオ(経済成長と労働参加が進まないケース)の3つのパターンの推計を行っている。
2017(平成29)年の就業者数は6,530万人であるのに対し、成長実現・労働参加進展シナリオ(経済成長と労働参加が進むケース)の推計においては、2040(令和22)年の就業者数は6,024万人とされ、ゼロ成長・労働参加現状シナリオ(経済成長と労働参加が進まないケース)の5,245万人への落ち込みと比べ、その減少を相当程度抑えることが可能である。
この場合の就業率は、女性25~29歳で84.6%、同30~34歳で83.4%、同35~39歳で88.9%、男女60~64歳で80.0%、65~69歳で61.7%、70歳以上で19.8%と推計されている。
今後の人口構造の変化を踏まえれば、就業者数の長期的な減少は不可避と考えられるが、医療福祉分野での人材確保や活力ある経済の維持を考えると女性、高齢者等をはじめとした一層の労働参加が不可欠であるといえる。なお、改正出入国管理及び難民認定法に基づく特定技能の在留資格に係る制度の影響については、この推計では考慮されていないが、引き続き外国人労働者が労働市場に与える影響について注視していく必要があろう。
【産業別の労働力需給推計では、医療・福祉などのシェアが増加すると見込まれる】
産業別に見た労働力需給推計においては、2017年と比較して2040年にかけて医療・福祉の伸びが大きい一方、卸売・小売業、鉱業・建設業、農林水産業での落ち込みが大きい。
2017年と2040年の就業者数の構成比(シェア)を比較した場合、シェアが増加すると見込まれるのは製造業、医療・福祉、運輸業、教育・学習支援、情報通信業である。
産業ごとの需給のミスマッチを最小に抑えつつ、我が国全体として就業率を高めていく必要がある。