令和2年 厚生労働白書
【非正規雇用をめぐる課題として、不本意非正規の問題のほか、正規雇用との間での賃金や教育訓練の格差が存在】p40
正規雇用労働者と非正規雇用労働者の賃金カーブを比較すると、「一般労働者(正社員・正職員)」は年齢を重ねると賃金額が上昇していくのに対し、「短時間労働者(正社員・正職員以外)」や「一般労働者(正社員・正職員以外)」は横ばいのままとなる形状の違いが存在している。この形状の違いは、ここ10年間でほとんど変化がみられない。
一方で、非正規雇用労働者の待遇の改善に向けては、最低賃金の引上げや同一労働同一賃金(不合理な待遇差の解消)の実現等の取組みが進められており、2010(平成22)年と2019年で比較すると、「一般労働者(正社員・正職員)」に比べて「短時間労働者(正社員・正職員以外)」や「一般労働者(正社員・正職員以外)」の伸びの方が大きくなって
いる。
また、教育訓練についても、正社員以外に実施する事業所は正社員に実施する事業所の約半数であるなど、正規雇用との間で格差が見られる。
【1993~2004年に学卒期を迎えた「就職氷河期」世代への支援も重要な課題】
バブル経済の崩壊の影響は、1993(平成5)~2004(平成16)年のいわゆる「就職氷河期」という形で現れ、その時期に就職活動を行った世代(いわゆる「就職氷河期」世代)の働き方に長期にわたって影響を与えている。
この「就職氷河期」世代は、現在、30歳代半ばから40歳代半ばとなっているが、こうした人々の中には、希望する就職ができず、現在も不本意ながら不安定な仕事に就いている、無業の状態にあるなど様々な課題に直面している人がいる。
この背景には、就職活動を行った時期の雇用情勢が厳しかったことや、企業側の人事・採用慣行等により、安定した職業に転職する機会が制約されてきたこと等が指摘されている。このように社会に出る時期の経済状況が長期間にわたって「就職氷河期」世代の働き方に影響を与え続けている状況に対し、社会全体で支援を行っていくことが求められている。
【「就職氷河期」世代の働き方の課題は今なお残っている】
「就職氷河期」世代を取り巻く状況について確認していく。まず、学卒直後の状況について、卒業時に進学も就職もしない割合を見ると、「就職氷河期」世代はその前の世代に比べて高いことが確認できる。
また、図表1-3-26は、2009(平成21)年、2014(平成26)年、2019年の3時点で、各年齢階級の所定内給与額を5年前の同一年齢階級と比較して増減率を示したものであるが、3時点ともに、「就職氷河期」世代を含む年齢階級は、その前の世代よりも所定内給与額がほぼ減少しているなど、「就職氷河期」世代は、就職した後もその賃金が前後の世代と比べて低くなっていることがわかる。
「就職氷河期」世代については、フリーター・ニート等を対象とした再チャレンジ施策など累次の若者雇用対策が講じられたことにより、経済環境の好転とともに、就職や正規雇用への移行が進んできた。
しかしながら、就職氷河期世代の中心層となる2019年段階で35~44歳の人の雇用形態等を見ると、非正規雇用の労働者である359万人の中に男性を中心に不本意非正規の方がいるほか、無業者は39万人と10年前から横ばいとなっているなど、依然として、様々な課題に直面している。