5 企業の雇用管理の変化と足元の雇用情勢(p43)
【賃金体系や福利厚生等の企業の雇用管理の在り方も変化している】
就業形態の多様化の背景には、働く側の意識の変化とともに、育児・介護等をしながら働く人、高齢期の人、心身の不調を抱えながら働く人など、働き方(時間、場所、ライフステージ等)に制約がある人が増加していることがある。
一方、企業の雇用管理も変化してきており、基幹労働力としての「男性正社員の長期勤続」を前提として設計されていた賃金体系や福利厚生等の見直しが行われてきており、働き方・職場を巡る長期的な変化が生じている。
賃金カーブの変化を見ると、産業別に形状のばらつきがあるものの、2002(平成14)年以降、労働者の年齢の上昇に伴うカーブは緩やかになってきている。
その背景には、基本給の決定要素として「学歴、年齢、勤続年数など」の割合が2000年代初めまでと比較して近年低い水準で推移していること、賃金体系では「役割・職務給」の割合が高まっていること等がある。
また、福利厚生については、一般社団法人日本経済団体連合会「福利厚生費調査結果報告」によると、企業における法定外福利費は1996(平成8)年度をピークに減少傾向にあったが、2018(平成30)年には増加している。
法定外福利費の内訳では独身寮や社宅の管理・運営費用である「住宅関連」が約半分を占めているが、2000年代に入り減少した。
一方、この間、「医療・健康」が増加してきている。
【雇用情勢は、人手不足が深刻化していたが、新型コロナウイルス感染症の感染拡大による影響がみられ、今後の動向に注意が必要】
雇用情勢を見ると、近年では2008(平成20)年9月のリーマンショックの後、2009(平成21)年夏には過去最低の有効求人倍率(2009年8月で0.42倍)、過去最高に並ぶ完全失業率(2009年7月で5.5%)となったが、その後、経済の回復が見られ、有効求人倍率、雇用人員判断DIのいずれも1990年代初めのバブル経済の頃に匹敵するほど人手不足が深刻化していた。
その後、2020(令和2)年4月から6月を見ると、新型コロナウイルス感染症の影響により、有効求人倍率は大きく低下(2020年4月:1.32倍、同年6月:1.11倍)したものの、完全失業率は緩やかな上(2020年4月:2.6%、同年6月:2.8%)となった。
特に、4月には休業者が大きく増加したが、5月と6月には、その増加幅は大きく縮小した。
総務省統計局「労働力調査」により、2か月目の調査世帯のみを対象とした集計結果を見れば、休業者であった人の約40%強の人が、従業者に戻る動きが続いた。
引き続き、新型コロナウイルス感染症が雇用に与える影響を注視しつつ、新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止と雇用・生活を守るために、必要な対策を講じていく必要がある。