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令和2年 厚生労働白書 希望出生率1・8 社会保障制度の維持・発展

令和2年 厚生労働白書

 

4)結婚、出産、子育ての希望を叶えることができる環境整備(p170

2020(令和2)年5月に、2025(令和7)年までの少子化対策の指針となる「第4少子化社会対策大綱」が策定された(2020529日閣議決定。以下「大綱」という。)。

少子化の主な原因は、未婚化・晩婚化と、有配偶出生率の低下であり、特に未婚化・晩婚化の影響が大きいと言われている。

若い世代の結婚、出産、子育ての希望がかなえられていない状況があり、その背景には、経済的な不安定さ、出会いの機会の減少、男女の仕事と子育ての両立の難しさ、子育てや教育にかかる費用負担の重さ等、様々な要因が複雑に絡み合っている。

 

これまでも待機児童対策、子ども・子育て支援制度の創設、幼児教育・保育の無償化など、様々な子育て支援策が拡充されてきたが、その検証を行いつつ、こうした希望の実現を阻む隘路の打破に取り組んでいく必要がある。

こうした観点から、大綱においては、一人でも多くの若い世代の結婚や出産の希望をかなえる「希望出生率1.8」の実現に向け、国民が結婚、妊娠・出産、子育てに希望を見出せるとともに、男女が互いの生き方を尊重しつつ、主体的な選択により、希望する時期に結婚でき、かつ、希望するタイミングで希望する数の子どもを持てる社会をつくることを基本的な目標とし、若い世代が将来に展望を持てる雇用環境等の整備や、子育てに関する支援の充実等の施策と数値目標を掲げ、施策を推進していくこととしている。

できる限り早期の「希望出生率1.8」の実現に向けて、将来の子供達に負担を先送りすることのないよう、安定的な財源を確保しつつ、有効性や優先順位を踏まえ、できることから速やかに着手することとしている。

 

6節 生活を支える社会保障制度の維持・発展に向けて

1基本的考え方(p184

平成の30年間の社会保障制度改革は、少子高齢化という急速な人口変動の中で、以下のような2つの軸で実施されてきた。

①機能の強化:介護保険制度や子ども・子育て支援制度の創設など、国民の生活ニーズに応えることを目的とした各種制度・事業の導入

持続可能性の強化:公的年金制度におけるマクロ経済スライドの導入、医療保険制度における患者負担の見直し等の給付と負担の見直し、国民健康保険制度における市町村国保の財政運営主体の都道府県単位化など、財政面の持続可能性を強化し、将来世代に制度を安定的に引き継いでいくための見直し

 

今後の社会保障について考えると、財政面の持続可能性の点では、国の歳出の4社会保障費が占める一方で、歳入について赤字国債に依存している我が国の現下の厳しい財政状況や、今後の人口減少下における経済成長の不確実性などを踏まえると、引き続き、給付と負担の見直し等の制度の見直しに取り組んでいく必要がある。

同時に、今後、2040(令和22)年を見据えると、

①人生100年時代、担い手不足・人口減少、新たなつながり・支え合いといった方向性に沿った改革が求められよう。

 

その際、特に重要となるのが、「担い手不足・人口減少」の観点からの持続可能性の強化である。人口減少は平成の終盤より始まっているが、医療福祉サービスの担い手不足や、保険料等を負担する総就業者数の減少等に直結するため、社会保障制度にとっては、サービス提供と財政の両面から持続可能性についてチャレンジを受けることとなる。

令和時代の社会保障制度を考えるに当たっては、この「担い手不足・人口減少」が社会保障制度にもたらすマイナスの影響をどう克服するかが大きな課題となろう。担い手を増やす、担い手のポテンシャルを上げる、技術で代替し生産性を上げるなど、これまで以上に積極的な対応が必要になってこよう。

さらに、「担い手不足・人口減少」のみならず、「人生100年時代」、「新たなつながり・支え合い」といった改革を進める上での共通する視点として、今後、社会実装化が見込まれるデジタル・トランスフォーメーションへの対応も欠かせないであろう。

 

デジタル・トランスフォーメーションとは

 

ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させるという考え方

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