厚生労働白書(p301)
■公的年金制度の最近の動向について
マクロ経済スライドの意義 マクロ経済スライドは、少子高齢化が進む中で、現役世代の負担が過重なものとならないように、保険料の上限を固定し、その限られた財源の範囲内で年金の給付水準を徐々に調整する仕組みとして導入されたものであり、賃金・物価がプラスの場合に限り、その伸びを抑制する形で年金額に反映させるものである。
マクロ経済スライドによる調整をより早く終了することができれば、その分、将来年金を受給する世代(将来世代)の給付が高い水準で安定することになる。 |
■近年の制度改正の施行状況
①マクロ経済スライドによる調整ルールの見直し
(2018(平成30)年4月施行)
マクロ経済スライドによる調整をできるだけ早期に実施するために、現在の年金受給者に配慮する観点から、賃金・物価上昇の範囲内で、前年度までの未調整分(キャリーオーバー分)を含めて年金額を調整することとした。 |
②国民年金第1号被保険者の産前産後期間の保険料免除
(2019(平成31)年4月施行)
次世代育成の観点から、国民年金第1号被保険者の産前産後期間(出産予定月の前月から出産予定月の翌々月までの4か月間)の保険料を免除することとし、免除期間については保険料を納付した場合と同額の給付を保障することとした。 (免除件数:63,377件(2020(令和2)年3月末))この費用については、国民年金第1号被保険者全体で負担し支え合う観点から、国民年金の保険料が月額100円(2004(平成16)年度価格水準)引き上げられた。 |
③賃金の低下に合わせた年金額の改定ルールの見直し
(2021(令和3)年4月施行)
少子高齢化が進む中で、現役世代の負担が過重なものとならないよう、現役世代の負担能力を示す賃金が変動する範囲内で年金額を改定するという基本的な考え方に立って、これまでも制度改正に取り組んできている。 2004年の年金制度改革では、賃金が物価ほどに上昇しない場合には、物価変動ではなく賃金変動にあわせて年金額を改定するルールが導入されていたが、受給者への影響を考慮した例外的な取り扱いとして、賃金と物価がともにマイナスで賃金が物価を下回る場合には、物価にあわせて年金額を改定し、また、賃金のみマイナスの場合には、年金額を据え置くこととしていた。
しかしながら、この例外を改め、将来世代の給付水準の確保のため、賃金が物価よりも低下する場合には、賃金の低下にあわせて年金額を改定するようルールを見直した。 2021年度の年金額改定は、賃金変動率(▲0.1%)が物価変動率(0.0%)を下回った ことから、この新しいルールに基づいて、賃金変動率(▲0.1%)を用いて0.1%のマイ ナス改定となった。
また、賃金や物価による改定率がマイナスの場合には、マクロ経済スライドによる調整は行わないこととされているため、2021年度の年金額改定においては、マクロ経済スライドによる調整は行われず、未調整分(▲0.1%)は翌年度以降に繰り越された。 |