厚生労働白書p308
年金積立金の管理・運用
(1) 年金積立金の管理・運用の概要
年金積立金の運用は、「積立金が、被保険者から徴収された保険料の一部であり、かつ、 将来の保険給付の貴重な財源となるものであることに特に留意し、専ら被保険者の利益の ために、長期的な観点から安全かつ効率的に行う」ことが法律で定められている。 2019(令和元)年財政検証で設定された複数の経済前提をもとに、各ケースに対応できる長期の実質的な運用利回り(名目運用利回り-名目賃金上昇率)1.7%を運用目標と し、厚生労働大臣が定めた年金積立金管理運用独立行政法人(以下「GPIF」という。)の 中期目標において、「長期的に年金積立金の実質的な運用利回り1.7%を最低限のリスク で確保すること」を定めている。 これを受けて、GPIFにおいて、リターン・リスク等の特性が異なる複数の資産への分散投資を基本として、長期的な観点からの資産構成割合 (基本ポートフォリオ)を定め、これに基づき年金積立金の管理・運用を行っている。 GPIFによる年金積立金の管理・運用は、運用受託機関等(信託銀行や投資顧問会社) に委託して行うほか、国内債券等の一部の資産については自家運用により行っている。 |
(2)年金積立金の管理・運用の考え方
GPIFが管理・運用を行う年金積立金は巨額であるため、市場に与える影響に留意しつ つ、効率的な運用を行っていくことが必要である。 また、概ね50年程度は取り崩す必要がない資金であるため、一時的な市場の変動に過度にとらわれる必要はなく、長期的な観点から運用収益を確保できるよう、長期目線に立った運用を行っていくことが必要である。 (以下 参考) GPIFでは、株式や外国債券を含め、国内外の様々な資産に分散投資を行っている。 株式は、短期的な価格変動リスクは債券よりも大きいものの、長期的に見た場合、債券よりも高い収益が期待できる。 株式を長期保有する意味は、国内外の企業活動やその結果としての経済成長の果実を「配当」及び保有株式の「評価益」という形で取り込むことにある。 また、外国債券は、為替変動による一時的な「ぶれ」は生じるものの、長期的に見た場合、国内債券よりも高い収益が期待できる。GPIFで重視しているリスクは、「市場の一時的な変動による短期的なリスク」ではなく、「年金財政上必要とされている運用収益が得られないリスク」であり、GPIFは、分散投資を行うことにより、「リスク」を抑制しながら、年金財政上必要な運用収益の確保を目指している。 |