判例(あけぼのタクシー事件からの出題です)
平成21年 問4
【問題】
労働基準法第24条第1項の定めるいわゆる賃金全額払の原則は、使用者が労働者に対して有する債権をもって労働者の賃金債権と相殺することを禁止する趣旨をも包含するものであり、使用者の責めに帰すべき事由によって解雇された労働者が解雇無効期間中に他の職に就いて得た利益を、使用者が支払うべき解雇無効期間中の賃金額から控除して支払うことはおよそ許されないとするのが最高裁判所の判例である。
【解答】 誤り
【事件概要】 タクシー会社A社の責めに帰すべき事由で解雇された労働者が、「解雇の無効」と「解雇期間中の賃金の支払い」を求めて会社を提訴した事件 労働者は、解雇無効期間中に他のタクシー会社(B社)で働き収入を得ており、A社が支払うべき解 雇無効期間中の賃金について争われた事件
【論点】 使用者の責めに帰すべき事由によって解雇された労働者が、解雇期間中に他の職に就いて収入を得た場合、使用者は、労働者に解雇期間中の賃金を支払うに当たり中間利益の額を解雇期間中の賃金額から控除することができるかどうかが論点になった事件
【結論】
① 解雇は無効
② 解雇期間中に「他の職に就いて利益」を得たときは、使用者は、労働者に解雇期間中の賃金を支払うに当たり「中間利益」の額を、賃金額から控除することができる。
ただし、労基法 12 条 1 項所定の平均賃金の 6 割に達するまでの部分については利益控除の対象 とすることが禁止
※中間利益とは、「他の職に就いて利益」
【具体例】
平均賃金 10,000円
解雇無効期間休業:30 日
総額:300,000 円
B社で得た収入:200,000 円
判例により控除できるのは、1日 4,000 円までなので、 4,000 円×30=120,000 円
A社は、180,000 円(300,000 円-120,000 円)の支払いが必要になります。
【平成23年 選択式】
【問題】「使用者の責めに帰すべき事由によって解雇された労働者が解雇期間中に他の職に就いて利益を得たときは、使用者は、右労働者に解雇期間中の賃金を支払うに当たり右利益〔…(略)…〕 の額を賃金額から控除することができるが、右賃金額のうち労働基準法 12 条 1 項所定の[ C ]に達するまでの部分については利益控除の対象とすることが禁止されているものと解するのが相当である」とするのが最高裁判所の判例である。
(解答) C:平均賃金の 6 割