【メトロコマース事件】
東京メトロ子会社「メトロコマース」の元契約社員らが正社員との待遇格差について訴えた事件
■概要
地下鉄の売店業務に従事していた契約社員が、正社員との退職金、賞与等の労働条件の相違について改正前の労働契約法第20条における不合理な正社員との格差にあたるとして損害賠償等の請求を求めた事件。
不合理な労働条件の禁止(旧第20条)
同一の使用者と労働契約を締結している有期契約労働者と無期契約労働者との間で、期間の定めがあることにより不合理に労働条件を相違させることを禁止するルール
【対象となる労働条件】
一切の労働条件について、適用。
賃金や労働時間等の狭義の労働条件だけでなく、労働契約の内容となっている災害補償、服務規律、教育訓練、付随義務、福利厚生など、労働者に対する一切の待遇が含まれます。
【判断の方法】
労働条件の相違が不合理と認められるかどうかは、
①職務の内容(業務の内容および当該業務に伴う責任の程度)
②当該職務の内容および配置の変更の範囲
③その他の事情を考慮して、個々の労働条件ごとに判断されます。
通勤手当、食堂の利用、安全管理などについて労働条件を相違させることは、上記①~③を考慮して、特段の理由がない限り、合理的とは認められないと解されます。
【判決までの流れ】
正社員と契約社員との退職金の待遇格差について、初めて最高裁で判決が示された事件で、
1審の東京地裁では、契約社員に対する退職金の未払いは不合理ではない。
2審の東京高裁では全く支給しないというのは不合理として、一定の支払いが命じられた。
最高裁では、退職金の支払いがないことは不合理とまではいえないとして、判決が確定。
【判決】
退職金の有無にかかわる労働条件の違いは「不合理とまでは評価できない」とする判断
■働き方改革関連法(2018年7月公布)により、労働契約法第20条は、パートタイム・有期雇用労働法(短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律第8条に統合されています。
働き方改革関連法のうち上記改正部分の施行日は、2020年4月1日(中小企業の適用は2021年4月1日)。
■パートタイム・有期雇用労働法(法8条 不合理な待遇の禁止)
事業主は、その雇用する短時間・有期雇用労働者の基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、当該待遇に対応する通常の労働者の待遇との間において、当該短時間・有期雇用労働者及び通常の労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情のうち、当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的に照らして適切と認められるものを考慮して、不合理と認められる相違を設けてはならない。 |