【長澤運輸事件】(平成30年6月1日最高裁判決)
■概要
60歳で定年退職した後、再雇用され、1年間の有期契約を締結。
年収に関して、仕事の内容が正社員と同様にも拘らず、退職前の2割ほどに引き下げられたために、「労働契約法第20条」に違反して無効を訴えた事件。
■労働契約法第20条(現在は、パートタイム・有期雇用労働法8条に移行)
(労働契約法第20条)参考 有期労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件が、期間の定めがあることにより同一の使用者と期間の定めのない労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件と相違する場合においては、当該労働条件の相違は、労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下この条において「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない。 |
■パートタイム・有期雇用労働法(法8条 不合理な待遇の禁止)
事業主は、その雇用する短時間・有期雇用労働者の基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、当該待遇に対応する通常の労働者の待遇との間において、当該短時間・有期雇用労働者及び通常の労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情のうち、当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的に照らして適切と認められるものを考慮して、不合理と認められる相違を設けてはならない。 |
■1審
⇒「職務の内容」と「人材活用の仕組み」が正社員と同じであるにもかかわらず、賃金についてだけ正社員との間で相違があるのは「不合理である」とし、労働契約法第20条に照らして「違法」であると判断。
■2審
⇒定年の前後で賃金を引き下げることは、一般的なことで、「不合理であるとまではいえず」、賃金を引き下げたことは「適法」であると判断。
■最高裁
⇒「精勤手当」と「時間外手当」を除き、賃金の引き下げは不合理ではないと判断。
職務の内容など、正社員と嘱託乗務員とが同じであったとしても、それをもって賃金の相違が不合理と直ちに結論付けることは妥当ではなく、「その他の事情」として、定年退職後の再雇用者であるかどうかなど、有期雇用労働者の置かれている立場も踏まえて総合的に検討することが必要とした。
■関連判例
メトロコマース事件