令和3年 労働者災害補償保険法の選択式(A、B)の解説です。
令和4年度の本試験では、択一式を意識しながら内容を確認してください。
令和2年法改正の複数事業労働者に関する問題です。
労災保険法は、令和2年に改正され、複数事業労働者(事業主が同一人でない2以上の事業に使用される労働者。以下同じ。)の2以上の事業の業務を要因とする負傷、疾病、傷害又は死亡(以下「複数業務要因災害」という。)についても保険給付を行う等の制度改正が同年9月1日から施行された。複数事業労働者については、労災保険法第7条第1項第2号により、これに類する者も含むとされており、その範囲については、労災保険法施行規則第5条において、【 A 】と規定されている。 |
(採点には影響しませんが、3行目の「傷害」が明らかにミスで、「障害」になります。)
の個所は、制度改正の沿革に関する内容で、【 A 】の選択肢を探す上では、
直接影響しません。
軽く流す程度で十分です。
従って、ポイントになる個所は、【 A 】の直前の個所になります。
複数事業労働者については、労災保険法第7条第1項第2号により、これに類する者も含むとされており、その範囲については、労災保険法施行規則第5条において、【 A 】と規定されている。 |
冒頭の3行「労災保険法は、~同年9月1日から施行された。」までは、問題文の中になくても成立する問題です。
上記の問題文をさらに簡略すると下記になります。
複数事業労働者の範囲については、労災保険法施行規則第5条において、【 A 】と規定されている。 |
令和2年の法改正の個所なので、十分に対策を打つ必要がありますが、(17)(18)(19)のように継続した月数に関する要件はないので、明らかに(20)が正解になります。
■選択肢候補
(17)負傷、疾病、障害又は死亡の原因又は要因となる事由が生じた時点以前1か月の間継続して事業主が同一人でない2以上の事業に同時に使用されていた労働者 (18)負傷、疾病、障害又は死亡の原因又は要因となる事由が生じた時点以前3か月の間継続して事業主が同一人でない2以上の事業に同時に使用されていた労働者 (19)負傷、疾病、障害又は死亡の原因又は要因となる事由が生じた時点以前6か月の間継続して事業主が同一人でない2以上の事業に同時に使用されていた労働者 (20)負傷、疾病、障害又は死亡の原因又は要因となる事由が生じた時点において事業主が同一人でない2以上の事業に同時に使用されていた労働者 |
則5条
法第七条第一項第二号の厚生労働省令で定めるものは、負傷、疾病、障害又は死亡の原因又は要因となる事由が生じた時点において事業主が同一人でない二以上の事業に同時に使用されていた労働者とする。 |
続いてBに進みます。
複数業務要因災害による疾病の範囲は、労災保険法施行規則第18条の3の6により、労働基準法施行規則別表第1の2第8号及び第9号に掲げる疾病その他2以上の事業の業務を要因とすることの明らかな疾病と規定されている。複数業務要因災害に係る事務の所轄は、労災保険法第7条第1項第2号に規定する複数事業労働者の2以上の事業のうち、【 B 】の主たる事務所を管轄する都道府県労働局又は労働基準監督署となる。 |
Bに関しても、【 B 】の直前の内容がポイントになります。
つまり、「複数業務要因災害に係る事務の所轄」に関する内容が、【 B 】
複数業務要因災害に係る事務の所轄は、労災保険法第7条第1項第2号に規定する複数事業労働者の2以上の事業のうち、【 B 】の主たる事務所を管轄する都道府県労働局又は労働基準監督署となる。 |
(13)その収入が当該複数事業労働者の生計を維持する程度の最も高いもの (14)当該複数事業労働者が最も長い期間勤務しているもの (15)当該複数事業労働者の住所に最も近いもの (16)当該複数事業労働者の労働時間が最も長いもの |
答えは、(13)「その収入が当該複数事業労働者の生計を維持する程度の最も高いもの」になります。
「複数業務要因災害に係る事務の所轄」に関しての問題ですが、
最終的には、業務災害が生じた場合に、お金の話になるので、(15)の距離や(14)、(16)の労働時間より、(13)の生計維持が最も客観的に判断が可能です。
■事務の所轄(則1条2項3項)
➀労働者災害補償保険法に規定する厚生労働大臣の権限は、都道府県労働局長に委任する。ただし、一定の権限は、厚生労働大臣が自ら行うことを妨げない。
②労働者災害補償保険に関する事務は、厚生労働省労働基準局長の指揮監督を受けて、 事業場の所在地を管轄する都道府県労働局長(「所轄都道府県労働局長」)が行う。 ただし、次の各号に掲げる場合は、当該各号に定める者を所轄都道府県労働局長とする。 (1)事業場が二以上の都道府県労働局の管轄区域にまたがる場合 ⇒その事業の主たる事務所の所在地を管轄する都道府県労働局長 (2)当該労働者災害補償保険等関係事務が複数業務要因災害に関するものである場合 ⇒複数事業労働者の二以上の事業のうち、その収入が当該複数事業労働者の生計を維持する程度が最も高いもの(「生計維持事業」)の主たる事務所の所在地を管轄する都道府県労働局長 ③労働者災害補償保険等関係事務のうち、保険給付(二次健康診断等給付を除く。)並びに社会復帰促進等事業のうち労災就学等援護費及び特別支給金の支給並びに厚生労働省労働基準局長が定める給付に関する事務は、都道府県労働局長の指揮監督を受けて、事業場の所在地を管轄する労働基準監督署長(「所轄労働基準監督署長」)が行う。 ただし、次の各号に掲げる場合は、当該各号に定める者を所轄労働基準監督署長とする。 (1)事業場が二以上の労働基準監督署の管轄区域にまたがる場合 ⇒その事業の主たる事務所の所在地を管轄する労働基準監督署長 (2)複数業務要因災害に関するものである場合 ⇒生計維持事業の主たる事務所の所在地を管轄する労働基準監督署長 |
最後に問題文にある「労働基準法施行規則別表第1の②」を確認します。
■労働基準法施行規則(別表第1の2)
1号…業務上の負傷に起因する疾病 2号…物理的因子による次に掲げる疾病 3号…身体に過度の負担のかかる作業態様に起因する次に掲げる疾病 4号…化学物質等による次に掲げる疾病 5号…粉じんを飛散する場所における業務によるじん肺症又はじん肺法に規定するじん肺と合併したじん肺法施行規則第一条各号に掲げる疾病 6号…細菌、ウイルス等の病原体による次に掲げる疾病 7号…がん原性物質若しくはがん原性因子又はがん原性工程における業務による次に掲げる疾病 8号…長期間にわたる長時間の業務その他血管病変等を著しく増悪させる業務による脳出血、くも膜下出血、脳梗塞、高血圧性脳症、心筋梗塞、狭心症、心停止(心臓性突然死を含む。)若しくは解離性大動脈瘤りゆう又はこれらの疾病に付随する疾病 9号…人の生命にかかわる事故への遭遇その他心理的に過度の負担を与える事象を伴う業務による精神及び行動の障害又はこれに付随する疾病 10号…前各号に掲げるもののほか、厚生労働大臣の指定する疾病 11号…その他業務に起因することの明らかな疾病 |
■上記、労働基準法施行規則(別表第1の2)のポイント
(1)労働者災害補償保険法の業務上の疾病の範囲を労働基準法施行規則で規定。
(労働者災害補償保険法でないところに注意)
(2)業務上の疾病のみ(通勤や負傷、障害、死亡の規定ではない。)
(3)上記の2号~10号に関しては具体的な疾病名が規定されています。
(4)設問の複数業務要因災害による疾病の範囲は、上記の8号、9号に掲げる疾病
(設問の論点)