今回は、令和4年版 労働経済白書の「はじめに」の内容です。
令和4年版 労働経済白書(厚生労働省)
-労働者の主体的なキャリア形成への支援を通じた労働移動の促進に向けた課題-
我が国の経済は、2020年から続く新型コロナウイルス感染症の影響が続く中、感染症を踏まえた暮らしや働き方、事業活動が定着してきた。
ワクチン接種の進展などの感染症対策の取組の成果が現れており、経済社会活動が徐々に活発化し、持ち直しの動きがみられている。
しかし、2021年は新たな変異株の出現などによる感染再拡大や、それに伴う緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の発出期間の長期化から、感染状況に応じて経済情勢にも停滞がみられるなど、感染症による景気の下振れリスクは依然として残った。
2021年の雇用情勢は、緊急事態宣言下となった1月~9月は一進一退の動きとなったが、9月末に緊急事態宣言等が解除されて以降は、就業者数、雇用者数や求人について回復に向けた動きがみられ、労働市場においては再び人手不足に戻りつつある状況となった。
他方で、高年齢層の非労働力化の動きがみられたほか、転職者数は2020年に続き、2年連続で大幅減となった。
「令和4年版労働経済の分析」では、第Ⅰ部「労働経済の推移と特徴」において、2021年の労働経済をめぐる動向を分析するとともに、第Ⅱ部において、「労働者の主体的なキャリア形成への支援を通じた労働移動の促進に向けた課題」と題し、今後、労働者一人ひとりの持つ能力を最大限発揮することが求められる我が国における、労働者の主体的なキャリア形成への支援を通じた労働移動の促進に向けた課題を分析している。
我が国では人口減少局面を迎えていることから、生産年齢人口や新規学卒者の減少などによる労働力供給の制約が見込まれている。
一方、介護・福祉分野やIT分野における人材不足が見込まれるなど、社会の変遷に伴い変化する労働力需要への対応が求められており、転職等の外部労働市場を通じた労働移動が労働力需給の調整において重要となると考えられる。
2020 年以降の感染症の影響下において、雇用調整助成金等及び緊急雇用安定助成金の拡充による雇用の下支え政策がとられてきた中で、完全失業者数の大幅な増加はみられなかったものの、転職等を通じた外部労働市場における労働移動には停滞がみられている。
今後の雇用情勢の回復状況に応じて、こうした状況を解消し、労働者の主体的なキャリア形成への支援を通じて労働移動を促進することが求められている。
第Ⅱ部では、このような問題意識に基づき、第1章「我が国の労働力需給の展望と労働移動 をめぐる課題」では、我が国の今後の労働力需給の展望を見据えた上で、労働市場が抱える課題を概観しつつ、それらに取り組む上での労働移動の重要性を確認する。
第2章「我が国の労働移動の動向」では、我が国の労働移動の概況を確認し、産業間・職種間での移動など、いわゆるキャリアチェンジを伴う転職の動向や転職に伴うキャリアアップの動向について分析を行っている。
第3章「主体的な転職やキャリアチェンジの促進において重要な要因」では、転職やキャリアチェンジを希望する者が円滑に転職を実現する上での課題について分析している。
第4章「主体的なキャリア形成に向けた課題」では、労働者の主体的なキャリア形成やそれを通じた労働移動を促進する上で、労使や行政に求められる取組について考察した。
ここでは、 根拠に基づく政策形成(EBPM:Evidence Based Policy Making)の一環として厚生労働省が保有する行政記録情報を用いた公共職業訓練の効果と課題に関する分析も行っている。