労働契約法は、平成20年3月から施行された法律で、就業形態が多様化し、労働者の労働条件が個別に決定・変更されるようになり、個別労働関係紛争が増加した背景に基づき制定された法律です。
平成21年に初めて1肢出題され、令和2年を除いて、毎年5肢1問の構成で出題されています。
■平成21-1D
平成20年3月1日から施行されている労働契約法において、労働契約の原則が第3条に規定されているが、同条第3項において、「労働契約は、労働者及び使用者が仕事と生活の調和にも配慮しつつ締結し、又は変更すべきものとする。」とされている。 |
(正解)労働契約法3条3項
【労働契約の原則(法3条)】
➀労働契約は、労働者及び使用者が対等の立場における合意に基づいて締結し、又は変更すべきものとする。 ②労働契約は、労働者及び使用者が、就業の実態に応じて、均衡を考慮しつつ締結し、又は変更すべきものとする。 ③労働契約は、労働者及び使用者が仕事と生活の調和にも配慮しつつ締結し、又は変更すべきものとする。 ④労働者及び使用者は、労働契約を遵守するとともに、信義に従い誠実に、権利を行使し、及び義務を履行しなければならない。 ⑤労働者及び使用者は、労働契約に基づく権利の行使に当たっては、それを濫用することがあってはならない。 |
■平成22-5A
労働契約法に関して、使用者は、労働契約に伴い、労働者及びその家族がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をしなければならない。 |
(誤り)労働契約法5条
「労働者及びその家族が」⇒「労働者が」
■労働者の安全への配慮(法5条)
使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。 |
■平成22-5B
労働契約法に関して、使用者は、労働者との合意がなければ労働者の不利益に労働条件を変更することはできないが、事業場の労働者の過半数を代表する労働組合の意見を聴いて就業規則を変更する場合には、労働条件を労働者の不利益に変更することができる。 |
(誤り)労働契約法9条、10条
労働契約の内容を変更する場合のルール。
合意の原則 |
就業規則の変更による労働条件の 変更 |
労働者及び使用者の合意があれば、労働条件を変更することが 可能。 |
(原則)就業規則の変更により労働者の不利益になる労働条件を変更することはできない。 (例外)➀かつ② ➀変更後の就業規則の周知 ②就業規則の変更が合理的なものであるとき
⇒不利益変更可能。 変更後の就業規則に定めるところによる。 |
■就業規則の変更が合理的なものであるかどうかの判断は、下記を総合的に考慮する必要があります。
➀個々の労働者の受ける不利益の程度
②使用者にとっての労働条件の変更の必要性
③変更後の就業規則の内容の相当性
④労働組合等との交渉の状況
⑤その他就業規則の変更に係る事情
■平成22-5C
労働契約法に関して、労働契約は、労働者及び使用者が、就業の実態に応じて、均衡を考慮しつつ締結し、又は変更すべきものである。 |
(正解)労働契約法3条2項
■労働契約の原則(法3条2項)
②労働契約は、労働者及び使用者が、就業の実態に応じて、均衡を考慮しつつ締結し、又は変更すべきものとする。 |
■平成22-5D
労働契約法は、労働基準法と異なり、民法の特別法であるから、同居の親族のみを使用する場合の労働契約についても適用される。 |
(誤り)労働契約法21条
2か所誤り。
・労働契約法、労働基準法共に民法の特別法。
・「適用される。」⇒「適用されない。」
■適用除外(法21条)
➀この法律は、国家公務員及び地方公務員については、適用しない。 ②この法律は、使用者が同居の親族のみを使用する場合の労働契約については、適用しない。 |
■平成22-5E
労働契約法に関して、使用者は、期間の定めのある労働契約については、やむを得ない事由がある場合であっても、その契約が満了するまでの間においては、労働者を解雇することができない。 |
(誤り)労働契約法17条1項
「やむを得ない事由がある場合」においては、労働者を解雇することができます。
具体的には、天災事変により事業の継続が不可能になった場合等が該当します。
■契約期間中の解雇等(法17条1項)
使用者は、期間の定めのある労働契約(「有期労働契約」という。)について、やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない。 |
■平成23-4A
労働契約法に関して、労働契約は、労働者及び使用者が、就業の実態に応じて、均衡を考慮しつつ締結し、又は変更すべきものとされている。 |
(正解)労働契約法3条2項
■平成23-4B
労働契約法に関して、労働者及び使用者は、期間の定めのある労働契約に関する事項を含め、労働契約の内容については、できるだけ書面により確認するものとされている。 |
(正解)労働契約法4条2項
■労働契約の内容の理解の促進(法4条2項)
労働者及び使用者は、労働契約の内容(期間の定めのある労働契約に関する事項を含む。)について、できる限り書面により確認するものとする。 |
■平成23-4C
労働契約法に関して、使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、労働契約法第10条ただし書に該当する場合を除き、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとされている。 |
(正解)労働契約法10条
■就業規則による労働契約の内容の変更(法10条)
使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の変更によっては変更されない労働条件として合意していた部分については、第12条に該当する場合を除き、この限りでない。 |
■平成23-4D
労働契約法に関して、労働者に在籍出向を命じる場合において、使用者の当該命令は、当該労働者の個別の同意を得た上で、当該出向が、その必要性、対象労働者の選定に係る事情その他の事情に照らして、権利を濫用したものと認められない態様で行われた場合のみ有効であるとされている。 |
(誤り)労働契約法14条
在籍出向の場合、労働者の個別の同意は不要。
■出向(法14条)
使用者が労働者に出向を命ずることができる場合において、当該出向の命令が、その必要性、対象労働者の選定に係る事情その他の事情に照らして、その権利を濫用したものと認められる場合には、当該命令は、無効とする。 |
■平成23-4E
労働契約法に関して、使用者は、有期労働契約について、その有期労働契約により労働者を使用する目的に照らして、必要以上に短い期間を定めることにより、その有期労働契約を反復して更新することのないよう配慮しなければならないとされている。 |
(正解)労働契約法17条2項
■第4章 期間の定めのある労働契約…契約期間中の解雇等(法17条)
➀使用者は、期間の定めのある労働契約(以下「有期労働契約」)について、やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない。 ②使用者は、有期労働契約について、その有期労働契約により労働者を使用する目的に照らして、必要以上に短い期間を定めることにより、その有期労働契約を反復して更新することのないよう配慮しなければならない。 |
■平成24-1A
労働契約法における「労働者」とは、使用者に使用されて労働し、賃金を支払われる者をいうとされており、これに該当すれば家事使用人についても同法は適用される。 |
(正解)労働契約法2条1項、21条
■定義(法2条)
➀この法律において「労働者」とは、使用者に使用されて労働し、賃金を支払われる者をいう。 ②この法律において「使用者」とは、その使用する労働者に対して賃金を支払う者をいう。 |
■横断…家事使用人
労働基準法…(法116条2項) |
労働契約法…(法21条) |
同居の親族のみを使用する事業及び家事使用人については、適用しない。 |
➀国家公務員及び地方公務員については、適用しない。 ②使用者が同居の親族のみを使用する場合の労働契約については、適用しない。 |
原則、家事使用人に関しては、労働基準法は適用除外。
一方、労働契約法は、家事使用人に関して適用。
■平成24-1B
使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとされている。 |
(正解)労働契約法5条
労働契約法5条そのものからの出題です。
平成22年問5Aに引続き出題。
■平成24-1C
労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことによって成立するものとされており、当事者の合意、認識等の主観的事情は、労働契約の成否に影響を与えない。 |
(誤り)労働契約法6条
労働契約は、当事者の合意により成立するので誤りです。
■労働契約の成立(法6条)
労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者及び使用者が合意することによって成立する。 |
■平成24-1D
労働者及び使用者は、その合意により、労働契約の内容である労働条件を変更することができるとされている。 |
(正解)労働契約法8条
■労働契約の内容の変更(法8条)
労働者及び使用者は、その合意により、労働契約の内容である労働条件を変更することができる。 |
■平成24-1E
使用者が労働者を懲戒することができる場合においても、当該懲戒が、その権利を濫用したものとして、無効とされることがある。 |
(正解)労働契約法15条
■懲戒(法15条)
使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする。 |
■平成25-1A
労働契約は、労働者及び使用者が仕事と生活の調和にも配慮しつつ締結し、又は変更すべきものとされている。 |
(正解)労働契約法3条3項
■労働契約の原則(法3条)
➀労働契約は、労働者及び使用者が対等の立場における合意に基づいて締結し、又は変更すべきものとする。 ②労働契約は、労働者及び使用者が、就業の実態に応じて、均衡を考慮しつつ締結し、又は変更すべきものとする。 ③労働契約は、労働者及び使用者が仕事と生活の調和にも配慮しつつ締結し、又は変更すべきものとする。 ④労働者及び使用者は、労働契約を遵守するとともに、信義に従い誠実に、権利を行使し、及び義務を履行しなければならない。 ⑤労働者及び使用者は、労働契約に基づく権利の行使に当たっては、それを濫用することがあってはならない。 |
■平成25-1B
使用者は、その雇用する労働者に従事させる業務を定めてこれを管理するに際し、業務の遂行に伴う疲労や心理的負荷等が過度に蓄積して労働者の心身の健康を損なうことがないよう注意する義務を負うとするのが、最高裁判所の判例である。 |
(正解)最判平成12年3月24日(電通事件)
■平成25-1C
いわゆる採用内定の制度の実態は多様であるため、採用内定の法的性質について一義的に論断することは困難というべきであり、採用内定の法的性質を判断するに当たっては、当該企業の当該年度における採用内定の事実関係に即してこれを検討する必要があるとするのが、最高裁判所の判例である。 |
(正解)最判昭和54年7月20日(大日本印刷事件)
■平成25-1D
労働契約法等に関して、使用者が社内の多数労働組合の同意を得て就業規則を変更し、55歳以降の賃金を54歳時よりも引き下げつつ、定年年齢を引き上げた事案について、本件就業規則の変更は、多数労働組合との交渉、合意を経て労働協約を締結した上で行われたものであるから、変更後の就業規則の内容は、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性等にかかわらず、労使間の利益調整がされた結果として合理的なものとみなすことができるとするのが最高裁判所の判例である。 |
(誤り)最判平成9年2月28日(第四銀行事件)
「労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性等にかかわらず、」の個所が誤り。
就業規則の変更の合理性の有無は、
具体的には、
・就業規則の変更によって労働者が被る不利益の程度
・使用者側の変更の必要性の内容や程度
・変更後の就業規則の内容自体の相当性
・代償措置その他関連する他の労働条件の改善状況
・労働組合等との交渉の経緯
・他の労働組合又は他の従業員の対応、同種事項に関する我が国社会における一般的状況等を総合考慮して判断すべきである。
■■平成25年-1Eは、パートタイム・有期雇用労働法からの出題のため割愛
■平成26-1A
労働契約法等に関して、「使用者が労働者を懲戒するには、あらかじめ就業規則において懲戒の種別及び事由を定めておくことを要する」とするのが、最高裁判所の判例である。 |
(正解)最判平成15年10月10日(フジ興産事件)
【判例の趣旨】
➀使用者が労働者を懲戒するには,あらかじめ就業規則において懲戒の種別及び事由を定めておくことを要する。
②就業規則が法的規範としての性質を有するものとして,拘束力を生ずるためには,その内容を適用を受ける事業場の労働者に周知させる手続が採られていることを要するものというべきである。
■平成26-1B
就業規則で定める基準と異なる労働条件を定める労働契約は、その部分については無効となり、無効となった部分は、就業規則で定める基準によるとされている。 |
(誤り)労働契約法12条
「就業規則で定める基準と異なる労働条件」⇒「就業規則で定める基準に達しない労働条件」
■就業規則違反の労働契約(法12条)
就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については、無効とする。この場合において、無効となった部分は、就業規則で定める基準による。 |
■平成26-1C
労働者が職種や業務内容を特定せずに労働契約を締結した場合においては、現に就業を命じられた特定の業務について労務の提供が十全にはできないとしても、その能力、経験、地位、当該企業の規模、業種、当該企業における労働者の配置・異動の実情及び難易等に照らして当該労働者が配置される現実的可能性があると認められる他の業務について労務の提供をすることができ、かつ、その提供を申し出ているならば、なお債務の本旨に従った履行の提供があると解するのが相当であるとするのが、最高裁判所の判例である。 |
(正解)最判平成10年4月9日(片山組事件)
■判例の趣旨
労働者が職種不問で労働契約を締結し、実際に就いた業務で十分な働きができなくても、能力に応じて他の業務での労務の提供ができ、かつ、その提供を申し出ているならば、なお債務の本旨に従った履行の提供があると解するのが、最高裁判所の判例である。
■平成26-1D
労働契約法第3条第1項において、「労働契約は、労働者及び使用者が対等の立場における合意に基づいて締結し、又は変更すべきものとする。」と規定されている。 |
(正解)労働契約法3条1項
■労働契約の原則(法3条)
➀労働契約は、労働者及び使用者が対等の立場における合意に基づいて締結し、又は変更すべきものとする。 ②労働契約は、労働者及び使用者が、就業の実態に応じて、均衡を考慮しつつ締結し、又は変更すべきものとする。 ③労働契約は、労働者及び使用者が仕事と生活の調和にも配慮しつつ締結し、又は変更すべきものとする。 ④労働者及び使用者は、労働契約を遵守するとともに、信義に従い誠実に、権利を行使し、及び義務を履行しなければならない。 ⑤労働者及び使用者は、労働契約に基づく権利の行使に当たっては、それを濫用することがあってはならない。 |
■平成26-1E
労働契約法第4条第2項は、労働者及び使用者は、期間の定めのある労働契約に関する事項を含む労働契約の内容について、できる限り書面によって確認するものとする旨、定めている。 |
(正解)労働契約法4条2項
■平成27-1A
労働契約法第3条第2項では、労働契約は就業の実態に応じて、均衡を考慮しつつ締結し、又は変更すべきとしているが、これには、就業の実態が異なるいわゆる正社員と多様な正社員の間の均衡は含まれない。 |
(誤り)労働契約法3条2項
いわゆる正社員と多様な正社員の間の均衡も含まれるので誤りです。
■平成27-1B
労働契約の基本的な理念及び労働契約に共通する原則を規定する労働契約法第3条のうち、第3項は様々な雇用形態や就業実態を広く対象とする「仕事と生活の調和への配慮の原則」を規定していることから、いわゆる正社員と多様な正社員との間の転換にも、かかる原則は及ぶ。 |
(正解)労働契約法3条3項
■平成27-1C
労働契約法第4条は、労働契約の内容はできるだけ書面で確認するものとされているが、勤務地、職務、勤務時間の限定についても、この確認事項に含まれる。 |
(正解)労働契約4条2項
■平成27-1D
裁判例では、労働者の能力不足による解雇について、能力不足を理由に直ちに解雇することは認められるわけではなく、高度な専門性を伴わない職務限定では、改善の機会を与えるための警告に加え、教育訓練、配置転換、降格等が必要とされる傾向がみられる。 |
(正解)労働契約法16条
■解雇(法16条)
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。 |
■平成27-1E
労働契約法第7条にいう就業規則の「周知」とは、労働者が知ろうと思えばいつでも就業規則の存在や内容を知り得るようにしておくことをいい、労働基準法第106条の定める「周知」の方法に限定されるものではない。 |
(正解)労働契約法7条
■労働契約の成立(法7条)
労働者及び使用者が労働契約を締結する場合において、使用者が合理的な労働条件が定められている就業規則を労働者に周知させていた場合には、労働契約の内容は、その就業規則で定める労働条件によるものとする。ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の内容と異なる労働条件を合意していた部分については、法12条に該当する場合を除き、この限りでない。 |
■就業規則違反の労働契約(法12条)
就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については、無効とする。この場合において、無効となった部分は、就業規則で定める基準による。 |
■平成28-1A
労働契約法第5条は労働者の安全への配慮を定めているが、その内容は、一律に定まるものではなく、使用者に特定の措置を求めるものではないが、労働者の職種、労務内容、労務提供場所等の具体的な状況に応じて、必要な配慮をすることが求められる。 |
(正解)労働契約法5条
■平成28-1B
労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者及び使用者が必ず書面を交付して合意しなければ、有効に成立しない。 |
(誤り)労働契約法6条
労働契約の成立の要件としては、契約内容について書面を交付することまでは求めていないので誤りです。
■平成28-1C
いわゆる在籍出向においては、就業規則に業務上の必要によって社外勤務をさせることがある旨の規定があり、さらに、労働協約に社外勤務の定義、出向期間、出向中の社員の地位、賃金、退職金その他の労働条件や処遇等に関して出向労働者の利益に配慮した詳細な規定が設けられているという事情の下であっても、使用者は、当該労働者の個別的同意を得ることなしに出向命令を発令することができないとするのが、最高裁判所の判例である。 |
(誤り)労働契約法14条、新日本製鐵事件
個別的同意を得ることなしに出向命令を発令することができるので誤りです。
■平成28-1D
使用者は、期間の定めのある労働契約について、やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができないが、「やむを得ない事由」があると認められる場合は、解雇権濫用法理における「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合」以外の場合よりも狭いと解される。 |
(正解)労働契約法17条1項
■平成28-1E
労働契約法は、使用者が同居の親族のみを使用する場合の労働契約及び家事使用人の労働契約については、適用を除外している。 |
(誤り)労働契約法21条
労働契約法の適用除外…下記2点
➀国家公務員及び地方公務員
②使用者が同居の親族のみを使用する場合の労働契約
■平成29-1A
労働契約法第2条第2項の「使用者」とは、「労働者」と相対する労働契約の締結当事者であり、「その使用する労働者に対して賃金を支払う者」をいうが、これは、労働基準法第10条の「使用者」と同義である。 |
(誤り)労働契約法2条2項
労働契約法の「使用者」とは、「労働者」と相対する労働契約の締結当事者で、「その使用する労働者に対して賃金を支払う者」をいい、労働基準法第10条の「事業主」に相当するもの、労働基準法の「使用者」より狭い概念になります。
■平成29-1B
「労働契約の内容である労働条件は、労働者と使用者との個別の合意によって変更することができるものであるが、就業規則に定められている労働条件に関する条項を労働者の不利益に変更する場合には、労働者と使用者との個別の合意によって変更することはできない。」とするのが、最高裁判所の判例である。 |
(誤り)労働契約法8条、9条(山梨県民信用組合事件)
労働者と使用者との個別の合意によって変更することはできない。
■就業規則による労働契約の内容の変更(法9条)
使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない。ただし、次条の場合は、この限りでない。 |
■就業規則による労働契約の内容の変更(法10条)
使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の変更によっては変更されない労働条件として合意していた部分については、第十二条に該当する場合を除き、この限りでない。 |
■平成29-1C
使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、労働契約法第11条に定める就業規則の変更に係る手続を履行されていることは、労働契約の内容である労働条件が、変更後の就業規則に定めるところによるという法的効果を生じさせるための要件とされている。 |
(誤り)労働契約法第10条、11条
■就業規則の変更に係る手続(法11条)
就業規則の変更の手続に関しては、労働基準法第89条(就業規則の作成・届出の義務)及び第90条(就業規則の作成の手続)の定めるところによる。 |
手続きだけではなく、「労働者の受ける不利益の程度」「労働条件の変更の必要性」「変更後の就業規則の内容の相当性」「労働組合等との交渉の状況」等の合理性の判断要素があることにより法的効果が生じます。
従って、手続きを履行しているだけでは、法的効果が生じることはなく誤りになります。
■平成29-1D
従業員が職場で上司に対する暴行事件を起こしたことなどが就業規則所定の懲戒解雇事由に該当するとして、使用者が捜査機関による捜査の結果を待った上で当該事件から7年以上経過した後に諭旨退職処分を行った場合において、当該事件には目撃者が存在しており、捜査の結果を待たずとも使用者において処分を決めることが十分に可能であったこと、当該諭旨退職処分がされた時点で企業秩序維持の観点から重い懲戒処分を行うことを必要とするような状況はなかったことなど判示の事情の下では、当該諭旨退職処分は、権利の濫用として無効であるとするのが、最高裁判所の判例の趣旨である。 |
(正解)労働契約法16条、(ネスレ日本事件)
会社が行った懲戒処分(論旨退職と懲戒解雇)は、権利を濫用したものとして無効であると判断。
(理由)
➀目撃者がいたので、捜査の結果を待たなくても懲戒処分の決定は可能
②7年間の時間の経過とともに職場の秩序は回復
■平成29-1E
有期労働契約が反復して更新されたことにより、雇止めをすることが解雇と社会通念上同視できると認められる場合、又は労働者が有期労働契約の契約期間の満了時にその有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由が認められる場合に、使用者が雇止めをすることが、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、雇止めは認められず、この場合において、労働者が、当該使用者に対し、期間の定めのない労働契約の締結の申込みをしたときは、使用者は当該申込みを承諾したものとみなされる。 |
(誤り)労働契約法19条
「期間の定めのない労働契約の締結の申込みをしたときは」⇒「従前の有期労働契約の内容である労働要件と同一の労働要件で当該申込みをしたときは」にすれば正解です。
■有期労働契約の更新等(法19条)
有期労働契約であって次の各号のいずれかに該当するものの契約期間が満了する日までの間に労働者が当該有期労働契約の更新の申込みをした場合又は当該契約期間の満了後遅滞なく有期労働契約の締結の申込みをした場合であって、使用者が当該申込みを拒絶することが、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、使用者は、従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件で当該申込みを承諾したものとみなす。 ➀当該有期労働契約が過去に反復して更新されたことがあるものであって、その契約期間の満了時に当該有期労働契約を更新しないことにより当該有期労働契約を終了させることが、期間の定めのない労働契約を締結している労働者に解雇の意思表示をすることにより当該期間の定めのない労働契約を終了させることと社会通念上同視できると認められること。 ②当該労働者において当該有期労働契約の契約期間の満了時に当該有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があるものであると認められること。 |
■平成30-3A
いわゆる採用内定の制度は、 |
(誤り)(大日本印刷事件)
前半が誤り。
いわゆる採用内定の制度は、従来わが国において広く行われているところであるが、その実態は多様であるため、採用内定の法的性質について一義的に論断することは困難というべきである。したがって、具体的事案につき、採用内定の法的性質を判断するにあたっては、当該企業の当該年度における採用内定の事実関係に即してこれを検討する必要がある。
■平成30-3B
使用者は、労働契約に特段の根拠規定がなくとも、労働契約上の付随的義務として当然に、安全配慮義務を負う。 |
(正解)労働契約法5条 通達(平成24年8月10日基発0810第2号)
使用者は、労働契約に基づいてその本来の債務として賃金支払義務を負うほか、労働契約に特段の根拠規定がなくとも、労働契約上の付随的義務として当然に安全配慮義務を負う。 |
■平成30-3C
就業規則の変更による労働条件の変更が労働者の不利益となるため、労働者が、当該変更によって労働契約の内容である労働条件が変更後の就業規則に定めるところによるものとはされないことを主張した場合、就業規則の変更が労働契約法第10条本文の「合理的」なものであるという評価を基礎付ける事実についての主張立証責任は、使用者側が負う。 |
(正解)労働契約法10条,
■労働契約の内容の変更(法10条)
使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。 |
■平成30-3D
「使用者が労働者を懲戒するには、あらかじめ就業規則において懲戒の種別及び事由を |
(誤り)(フジ興産事件)
⇒定めておくことを要する。そして、就業規則が法的規範としての性質を有するものとして、拘束力を生ずるためには、その内容を適用を受ける事業場の労働者に周知させる手続が採られていることを要するものというべきである。」
■平成30-3E
労働契約法第18条第1項の「同一の使用者」は、労働契約を締結する法律上の主体が同一であることをいうものであり、したがって、事業場単位ではなく、労働契約締結の法律上の主体が法人であれば法人単位で、個人事業主であれば当該個人事業主単位で判断される。 |
(正解)労働契約法18条
■有期労働契約の期間の定めのない労働契約への転換(法18条)
同一の使用者との間で締結された二以上の有期労働契約の契約期間を通算した期間が5年を超える労働者が、当該使用者に対し、現に締結している有期労働契約の契約期間が満了する日までの間に、当該満了する日の翌日から労務が提供される期間の定めのない労働契約の締結の申込みをしたときは、使用者は当該申込みを承諾したものとみなす。 |
■令和1-3A
労働契約法第4条第1項は、「使用者は、労働者に提示する労働条件及び労働契約の内容について、労働者の理解を深めるようにする」ことを規定しているが、これは労働契約の締結の場面及び変更する場面のことをいうものであり、労働契約の締結前において使用者が提示した労働条件について説明等をする場面は含まれない。 |
(誤り)労働契約法4条1項
末尾が誤り。「含まれない。」⇒「含まれる。」
■令和1-3B
就業規則に定められている事項であっても、例えば、就業規則の制定趣旨や根本精神を宣言した規定、労使協議の手続に関する規定等労働条件でないものについては、労働契約法第7条本文によっても労働契約の内容とはならない。 |
(正解)労働契約法7条
就業規則の中に記載する「経営理念」や「理想とする会社のビジョン」等は、労働契約の内容に該当しないので正解です。
■令和1-3C
労働契約法第15条の「懲戒」とは、労働基準法第89条第9号の「制裁」と同義であり、同条により、当該事業場に懲戒の定めがある場合には、その種類及び程度について就業規則に記載することが義務付けられている。 |
(正解)労働契約法15条
懲戒処分をする場合には、必ず就業規則に記載する必要があります。
■令和1-3D
有期労働契約の契約期間中であっても一定の事由により解雇することができる旨を労働者及び使用者が合意していた場合、当該事由に該当することをもって労働契約法第17条第1項の「やむを得ない事由」があると認められるものではなく、実際に行われた解雇について「やむを得ない事由」があるか否かが個別具体的な事案に応じて判断される。 |
(正解)労働契約法17条1項
通達からの問題です。
たとえ、労使合意があっても「やむを得ない事由」に関しては、一律に判断するのではなく個別具体的な事案に応じて判断することが必要であるという内容です。
■令和1-3E
労働契約法第10条の「就業規則の変更」には、就業規則の中に現に存在する条項を改廃することのほか、条項を新設することも含まれる。 |
(正解)労働契約法10条
就業規則の変更には、条項の「改廃」や「新設」も含まれます。
■■令和2年度 労働契約法からの出題なし。
■令和3-3A
労働契約法第7条は、「労働者及び使用者が労働契約を締結する場合において、使用者が合理的な労働条件が定められている就業規則を労働者に周知させていた場合には、労働契約の内容は、その就業規則で定める労働条件によるものとする。」と定めているが、同条は、労働契約の成立場面について適用されるものであり、既に労働者と使用者との間で労働契約が締結されているが就業規則は存在しない事業場において新たに就業規則を制定した場合については適用されない。 |
(正解)労働契約法7条
前半の論点は、法的効力の順位(法令>就業規則>労働契約)から考えて、正解です。
後半の論点は、常時10人以上の労働者を使用する使用者は、就業規則を作成する義務があります。
問題文は、「就業規則が存在しない事業場」ということで、10人未満の事業場であることがわかります。
就業規則が存在しない事業場で「労働者が常時10人以上になった場合」、あるいは、「10人未満であっても就業規則を作成した場合」に関して、労働契約締結時にさかのぼって遡及適用はされないという内容になります。
■令和3-3B
使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合について定めた労働契約法第10条本文にいう「労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情」のうち、「労働組合等」には、労働者の過半数で組織する労働組合その他の多数労働組合や事業場の過半数を代表する労働者だけでなく、少数労働組合が含まれるが、労働者で構成されその意思を代表する親睦団体は含まれない。 |
(誤り)労働契約法10条
就業規則の変更による労働条件の変更は、労働者に係る重要な内容になるので、親睦団体含めて広く対応する必要があるため誤りになります。
■令和3-3C
労働契約法第13条は、就業規則で定める労働条件が法令又は労働協約に反している場合には、その反する部分の労働条件は当該法令又は労働協約の適用を受ける労働者との間の労働契約の内容とはならないことを規定しているが、ここでいう「法令」とは、強行法規としての性質を有する法律、政令及び省令をいい、罰則を伴う法令であるか否かは問わず、労働基準法以外の法令も含まれる。 |
(正解)労働契約法13条
■法令及び労働協約と就業規則の関係(法13条)
就業規則が法令又は労働協約に反する場合には、当該反する部分については、第7条、第10条及び前条の規定は、当該法令又は労働協約の適用を受ける労働者との間の労働契約については、適用しない。 |
■令和3-3D
有期労働契約の更新時に、所定労働日や始業終業時刻等の労働条件の定期的変更が行われていた場合に、労働契約法第18条第1項に基づき有期労働契約が無期労働契約に転換した後も、従前と同様に定期的にこれらの労働条件の変更を行うことができる旨の別段の定めをすることは差し支えないと解される。 |
(正解)労働契約法18条
■無期労働契約への転換(法18条)
同一の使用者との間で締結された2以上の有期労働契約の契約期間を通算した期間が5年を超える労働者が、当該使用者に対し、現に締結している有期労働契約の契約期間が満了する日までの間に、当該満了する日の翌日から労務が提供される期間の定めのない労働契約の締結の申込みをしたときは、使用者は当該申込みを承諾したものとみなす。 |
・5年ルールと称されるもので、通算5年を超える労働者が「無期労働契約への転換」を申込みした場合は、使用者は、その申込みを承諾したものみなす規定。
■転換の要件
➀更新が1回以上行われていること(1度も更新がない場合は、対象外) ②通算の契約期間が5年を超えていること ③労働者が転換の申込みをしたこと |
転換の申込み⇒転換の申込みは、現に締結している有期労働契約の契約期間の満了日までに行う必要あり。
■令和3-3E
有期労働契約の更新等を定めた労働契約法第19条の「更新の申込み」及び「締結の申込み」は、要式行為ではなく、使用者による雇止めの意思表示に対して、労働者による何らかの反対の意思表示が使用者に伝わるものでもよい。 |
(正解)労働契約法19条
「要式行為」とは、遺言や婚姻等のように、書面を作成したり、届出を出したりといった、法令に定める一定方式に従って行わなければ不成立又は無効とされる法律行為。
設問の「更新の申込み」及び「締結の申込み」は、使用者にその旨の意思表示が伝われば成立することになります。