労働基準法

《目次》

●解雇制限(法19条)…6問

● 解雇の予告(法20条)…2問

●細谷服飾事件(判例)…2問

●解雇予告の適用除外(法21条)…2問

●退職時の証明(法22条)…5問

●金品の返還(法23条)…1問


【解雇制限】(法19条)

【問題】客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない解雇をした使用者は、労働基準法に基づき、罰則に処される。
(平成23年 問3B)
【解答】×
【解説】(法119条、労働契約法16条)
■解雇に関する規定は労働契約法16条に「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。 」と規定。
■労働契約法、労働基準法には、設問の使用者に対する罰則の規定はないため誤り。


【問題】使用者は、産前産後の女性が労働基準法第65条の規定によって休業する期間及びその後30日間は、やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合であっても、解雇してはならない。

(平成21年 問2C)

【解答】×

【解説】(法19条)
■産前産後の女性が労働基準法第65条の規定によって休業する期間及びその後30日間は原則、解雇制限期間に。
ただし、
①天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合+行政官庁の認定
②使用者が法第81条の打切補償を支払う場合

上記①、②の場合は、解雇制限の規定が適用されない。

つまり、解雇が可能。

■「やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合であっても、解雇してはならない」の箇所が誤り。


【問題】業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のため休業している労働者については、使用者が、労働基準法第81条の規定によって打切補償を支払った場合(労働者災害補償保険法第19条の規定によって打切補償を支払ったものとみなされた場合を含む。)又は天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となりその事由について行政官庁の認定を受けた場合には、労働基準法第19条第1項の規定による解雇制限は適用されない。

(平成19年 問4B)

【解答】○

【解説】(法19条)
■(原則)使用者は、労働者が
・業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後30日間並びに
・産前産後の女性が法65条の規定によって休業する期間及びその後30日間
⇒解雇不可。(解雇制限)

(例外)
使用者が、
・法81条の規定によって打切補償を支払う場合(労働者災害補償保険法第19条の規定によって打切補償を支払ったものとみなされた場合を含む。)
・天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合(この場合にはその事由について行政官庁の認定を受ける必要がある。)

⇒解雇制限の規定は適用されない。


【問題】業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業している労働者については、使用者が労働基準法第81条の規定によって打切補償を支払った場合(労働者災害補償保険法第19条によって打切補償を支払ったものとみなされた場合を含む。)にのみ労働基準法第19条第1項の解雇制限の規定の適用が除外される。

(平成13年 問2B)

【解答】×

【解説】(法19条1項)
■解雇制限の例外の問題
①打切補償を支払う場合
⇒業務上の傷病の療養のために休業(その後30日間を含む。)する者
 (行政官庁の認定不要)

②天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が困難となった場合
⇒業務上の傷病の療養のために休業(その後30日間を含む。)する者
⇒産前産後の休業(その後30日間を含む。)をする者
の双方が対象。
 (行政官庁の認定は必要。)
■設問の中に『のみ』という限定的な言葉は要注意。他に要件がないのか確認することが必要。


【問題】使用者は、労働者が「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(以下「育児・介護休業法」という。)の規定によって育児休業又は介護休業をする期間及びその後30日間は、当該労働者を解雇してはならない。

(平成13年 問2A)

【解答】×

【解説】(法19条1項)
■「育児休業、介護休業…」は、解雇制限の対象外のため誤り。
■解雇制限とくれば⇒「業務上…」「産前産後…」の2つ。


【問題】一定の事業に限ってその完了に必要な期間を契約期間とする労働契約を締結している労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業している期間中に、当該事業が完了し当該労働契約の終期が到来するような場合においては、当該労働者の労働契約はその契約期間の満了によって終了するものであって、労働基準法第19条第1項の解雇制限の規定の適用はない。

(平成13年 問2C)

【解答】○

【解説】(法19条1項)
■期間の定めのある労働契約は、自動更新する場合など他に特段の事情がない限り、契約期間が満了したときに、⇒自動的に終了。

したがって、業務災害によりその療養のために休業する期間中の労働契約も当初の契約期間の満了とともに終了することになり解雇の問題は生じない。

(つまり、法19条の解雇制限の問題は生じない。)


【解雇の予告】(法20条)

【問題】労働基準法第20条は、雇用契約の解約予告期間を2週間と定める民法第627条第1項の特別法に当たる規定であり、労働者が一方的に労働契約を解約する場合にも、原則として30日前に予告することを求めている。

(平成23年 問3A)
【解答】×
【解説】(法20条1項、民法627条)
■労働基準法20条⇒使用者が労働者を解雇する場合に適用。

■労働者が労働契約を解約する場合には適用されない。


【問題】季節的業務に8月25日から10月30日までの雇用期間を定めて雇い入れた労働者を、使用者が、雇入れ後1か月経過した日において、やむを得ない事由によって解雇しようとする場合には、解雇の予告に関する労働基準法第20条の規定が適用される。

(平成19年 問4E)

【解答】×

【解説】(法20条、法21条)
■季節的業務に4箇月以内の期間を定めて使用される者(所定の期間を超えて引き続き使用されるに至った場合は除く)については法20条の解雇予告の規定は適用されない。

「季節的業務…」とくれば、「4月以内の期間を定めて使用される者」⇒「所定の期間を超えて引き続き使用されるに至ったとき」
に初めて解雇予告が必要。

■設問では、8月25日から10月30日までの期間で、67日間の期間になりますが、雇入れ後1カ月経過後の解雇なので、所定の期間(67日)を超えていないために誤り。


【細谷服飾事件等】 (判例)

【問題】使用者は、ある労働者を5月31日をもって解雇するため、5月13日に解雇予告をする場合には、平均賃金の12日分の解雇予告手当を支払わなければならない。

(平成16年 問3E)

【解答】○

【解説】(法20条、民法140条)
■5月31日をもって解雇とするためには⇒30日前の5月1日に通知する必要がある。
■ただし、起算日は民法により翌日の5月2日からになるので、5月13日に解雇予告をする場合は、2日から13日までの12日間の解雇予告手当を支払えば問題なし。  


【問題】最高裁判所の判例によると、労働基準法第114条の付加金支払義務は、使用者が同法第20条の予告手当等を支払わない場合に、当然発生するものではなく、労働者の請求により裁判所がその支払を命ずることによって、初めて発生するものと解すべきであるから、使用者に同法第20条の違反があっても、既に予告手当に相当する金額の支払を完了し使用者の義務違反の状況が消滅した後においては、労働者は同法第114条による付加金請求の申立をすることができないものと解すべきである、とされている。

(平成18年 問2D)
【解答】○
【解説】(細谷服装事件(昭和35年3月11日最高裁判決))
■設問のとおり正しい。
■労基法114条の付加金は、労働者の請求に基き裁判所の命令によって使用者に課せられる。
■労働者の解雇に当って使用者側に労働基準法20条の違反があっても、その後、予告手当に相当する金額の支払を完了し、使用者の義務が終了していれば、労働者は付加金請求の申立てはすることができないということで正しい設問。


【解雇予告の適用除外】 (法21条)

【問題】労働基準法第20条所定の予告期間及び予告手当は、3か月の期間を定めて試の使用をされている者には適用されることはない。

(平成23年 問3C)

【解答】×
【解説】(法21条)
■労基法20条の解雇の予告の規定は、下記該当する労働者については、原則適用されない。
例外として、

①に該当する者が1箇月を超えて引き続き使用されるに至った場合

②若しくは③に該当する者が所定の期間を超えて引き続き使用されるに至った場合又は

④に該当する者が14日を超えて引き続き使用されるに至った場合においては、解雇の予告が必要。
①日日雇い入れられる者
②2箇月以内の期間を定めて使用される者
③季節的業務に4箇月以内の期間を定めて使用される者
④試の使用期間中の者
■3か月の期間を定めて試の使用をされている者でも、14日を超えて引き続き使用される場合は、解雇予告が必要。


【問題】日々雇い入れられる者については、労働基準法第20条に定める解雇予告に関する規定は適用されることはない。

(平成13年 問2E)

【解答】×
【解説】(法21条但書)
■「日日雇い入れられる者」であっても、1箇月を超えて引き続き使用されるに至った場合

⇒解雇予告に関する規定は適用。


【退職時の証明等】 (法22条)

【問題】労働者と使用者との間で退職の事由について見解の相違がある場合、使用者が自らの見解を証明書に記載し労働者の請求に対し遅滞なく交付すれば、基本的には労働基準法第22条第1項違反とはならないが、それが虚偽であった場合(使用者がいったん労働者に示した事由と異なる場合等)には、同項の義務を果たしたことにはならない。

(平成22年 問2C)

【解答】○

【解説】(法22条1項、平成11年3月31日基発169号)
■労働者から請求があった場合⇒遅滞なく証明書を交付しなければならない。

■労働者と使用者との間の退職の事由についての見解の相違での証明書は適法。

■ただし、当初の会社の見解と証明書の内容が虚偽により異なれば当然退職時の証明を果たしたことにはならず違法。

 


【問題】使用者は、労働者が退職の場合において、使用期間、業務の種類、その事業における地位、賃金又は退職の事由(退職の事由が解雇の場合にあっては、その理由を含む。)について証明書を請求した場合においては、遅滞なくこれを交付しなければならない。

(平成15年 問2D)

【解答】○

【解説】(法22条1項)
■退職時証明書の内容(退職後)
①使用期間
②業務の種類
③その事業における地位
④賃金
⑤退職の事由(退職の事由が解雇の場合にあっては、その理由も含む)

■ 解雇予告期間中に関しての証明書
⇒解雇予告日から実際の退職の日までの間に、解雇予告を受けた当該労働者から解雇理由についての証明書の交付請求があった場合⇒使用者は遅滞なく交付しなければならない。
請求可能な証明事項は⇒『解雇理由』のみ。


【問題】労働基準法第22条第1項の規定により、労働者が退職した場合に、退職の事由について証明書を請求した場合には、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならず、また、退職の事由が解雇の場合には、当該退職の事由には解雇の理由を含むこととされているため、解雇された労働者が解雇の事実のみについて使用者に証明書を請求した場合であっても、使用者は、解雇の理由を証明書に記載しなければならない。

(平成22年 問2D)

【解答】×

【解説】(法22条)

■退職時等の証明書⇒労働者の請求しない事項は記入不可

■「解雇の事実のみ」の請求に対して、「解雇の理由」を記入することはできない。


【問題】労働基準法第22条第4項において、あらかじめ第三者と謀り、労働者の就業を妨げることを目的として、労働者の国籍、信条、社会的身分若しくは労働組合運動に関する通信をし、又は退職時等の証明書に秘密の記号を記入してはならないとされているが、この「労働者の国籍、信条、社会的身分若しくは労働組合運動」は制限列挙事項であって、例示ではない。

(平成22年 問2E)

【解答】○
【解説】(法22条4項、昭和22年12月25日基発502号、平成15年12月26日基発1226002号)
■使用者は、あらかじめ第三者と謀り、労働者の就業を妨げることを目的として、
労働者の国籍、信条、社会的身分若しくは労働組合運動に関する通信をし、又は退職時等の証明書に秘密の記号を記入してはならない。
■「労働者の国籍、信条、社会的身分若しくは労働組合運動」は制限列挙事項。


【問題】労働基準法第22条第2項においては、使用者は、労働者が、同法第20条第1項の解雇の予告がされた日から退職の日までの間において、当該解雇の理由について証明書を請求した場合においては、遅滞なくこれを交付しなければならない旨規定されているが、この規定は、即時解雇の場合には、適用されないものである。

(平成16年 問3C)

【解答】○

【解説】(法22条2項、平成15年10月22日基発1022001号)
■法22条2項の規定⇒解雇予告日から解雇日までの期間中に、労働者から請求があった場合に証明書を交付。

■解雇予告が必要ない即時解雇の場合はこの規定は適用されない。

■ただし、即時解雇の場合でも法22条1項の「退職時の証明」により解雇理由について請求があった場合には証明書を交付しなければならない。


【金品の返還】(法23条)

【問題】死亡した労働者の退職金の支払いは、権利者に対して支払うこととなるが、この権利について、就業規則において、民法の遺産相続によらず、労働基準法施行規則第42条、題43条の順位による旨定めた場合に、その定めた順位によって支払った場合は、その支払いは有効であると解されている。

(平成24年 問1B)

【解答】〇

【解説】(法23条)

■就業規則において、受給権者の範囲、順位が、民法の規定する相続人と異なる定めをしている場合でも、遺族の生活保障を目的としたものとし有効と判断。


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