労働基準法

《目次》

●解雇の予告(法20条)…10問

【解雇の予告】(法20条)

【問題】使用者が労働者を解雇しようとする場合においては、労働基準法第20条第1項の規定により、少なくともその30日前にその予告をしなければならないが、その予告の日数は、1日について平均賃金を支払った場合においては、その日数を短縮することができる。例えば、8月27日をもって労働者を解雇しようとする場合において、8月14日に解雇の予告をしたときは、少なくとも平均賃金の17日分の解雇予告手当を支払わなければならない。

(平成18年 問7B)

【解答】○

【解説】(法20条、民法140条)
解雇予告期間の計算は、初日不算入
設問では、8月27日をもって解雇するためには30日前の予告として⇒7月28日に通知する必要がある。
(翌日起算なので、7月29日から数えると8月27日で丁度30日に。)
■8月14日に解雇予告をする場合⇒解雇予告期間は13日+解雇予告手当17日分(7月29日から8月14日まで)=30日 ということで正しい。

【POINT】

①使用者が労働者を解雇しようとする場合においては、労働基準法第20条第1項の規定により、少なくともその30日前にその予告が必要

その予告の日数は、1日について平均賃金を支払った場合においては、その日数を短縮することが可能。

③例えば、8月27日をもって労働者を解雇しようとする場合において、8月14日に解雇の予告をしたときは、少なくとも平均賃金の17日分の解雇予告手当を支払わなければならない。


【問題】労働基準法第56条の最低年齢違反の労働契約のもとに就労している児童については、そもそも当該労働契約が無効であるから、その違反を解消するために当該児童を解雇する場合には、労働基準法第20条の解雇の予告に関する規定は、適用されない。

(平成24年 問2B)

【解答】×

【解説】(法20条)

■設問の場合でも、法20条の解雇の予告に関する規定は適用される。


【問題】労働基準法第20条は、雇用契約の解約予告期間を2週間と定める民法第627条第1項の特別法に当たる規定であり、労働者が一方的に労働契約を解約する場合にも、原則として30日前に予告することを求めている。

(平成23年 問3A)
【解答】×
【解説】(法20条1項、民法627条)
■労働基準法20条⇒使用者が労働者を解雇する場合に適用。

■労働者が労働契約を解約する場合には適用されない。


【問題】天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合においても、使用者は、労働基準法第20条所定の予告手当を支払うことなく、労働者を即時に解雇しようとする場合には、行政官庁の認定を受けなければならない。

(平成23年 問3E)

【解答】○
【解説】(法20条)
■使用者は、労働者を解雇しようとする場合
⇒原則として、少なくとも30日前にその予告をしなければならず、30日前に予告をしない使用者は、30日分以上の平均賃金を支払わなければなりません。
例外として
①天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合又は労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合
⇒予告期間又は解雇予告手当を支払うことなく解雇することが可能。
ただし、この場合は、行政官庁(所轄労働基準監督署長)の認定が必要。


【問題】労働基準法第20条第1項ただし書の事由に係る行政官庁の認定(以下「解雇予告除外認定」という。)は、原則として解雇の意思表示をなす前に受けるべきものではあるが、それは、同項ただし書に該当する事実があるか否かを確認する処分であって、認定されるべき事実がある場合には使用者は有効に即時解雇をなし得るものと解されるので、そのような事実がある場合には、即時解雇の意思表示をした後、解雇予告除外認定を得たときは、その解雇の効力は使用者が即時解雇の意思表示をした日に発生すると解されている。

(平成18年 問7E)

【解答】○

【解説】(法20条、昭和63年3月14日基発150号)

■解雇の効力の日に関しての問題。

「解雇の意思表示=解雇の効力発生日」ということで正しい。


【問題】使用者が平均賃金の30日分の解雇予告手当を支払って労働者の解雇を行う意思表示をする場合には、解雇予告手当を支払った日数分を限度として当該解雇による労働契約の終了日を遡ることができる。例えば5月1日に平均賃金の30日分の解雇予告手当を支払って労働者の解雇の意思表示をする場合には、当該解雇による労働契約の終了日をその年の4月1日にまで遡ることができる。

(平成13年 問2D)

【解答】×

【解説】(法20条)
■設問のように、解雇予告手当を支払うことにより、労働契約の終了日をさかのぼることはできない。


【問題】使用者は、労働者の責に帰すべき事由によって解雇する場合には、労働者の帰責性が軽微な場合であっても、労働基準法第20条所定の解雇予告及び予告手当の支払の義務を免れる。
(平成21年 問2E)
【解答】×
【解説】(法20条)
■労働者の帰責性が軽微な場合であっても、解雇予告及び予告手当が必要。


【問題】労働者によるある行為が労働基準法第20条第1項但書の「労働者の責に帰すべき事由」に該当する場合において、使用者が、即時解雇の意思表示をし、当日同条第3項の規定に基づいて所轄労働基準監督署長に解雇予告除外認定の申請をして翌日その認定を受けたときは、その即時解雇の効力は、使用者が即時解雇の意思表示をした日に発生すると解されている。

(平成15年 問4C)

【解答】○

【解説】(法20条、民法540条)

■設問のとおり正しい。

■論点は解雇の効力の発生日について
■設問の中段に「解雇予告除外認定の申請をして翌日…」という文言で戸惑わずに、
■あくまで、解雇の効力⇒労働者への意思表示した日に発生。


【問題】定年に達したことを理由として解雇するいわゆる「定年解雇」制を定めた場合の定年に達したことを理由とする解雇は、労働基準法第20条の解雇予告の規制を受けるとするのが最高裁判所の判例である。

(平成22年 問2A)

【解答】○

【解説】(法20条、秋北バス事件(昭和43年12月25日最高裁判決))
■定年制⇒「定年退職」と「定年解雇」の二種類。
例えば、
「従業員の定年は60歳とし、定年に達した月の末日をもって退職とする」旨の規定は、
⇒定年に達したことにより自動的に労働契約が終了する無条件の終期の定めであり、これが「定年退職制」。

「定年は満60歳とする。ただし、定年に達したものでも業務上必要ある場合、会社は、本人の健康及び勤務意欲等を勘案し、嘱託として新たに採用することがある」旨の規定は、
⇒自動退職ではなく、退職してもらう場合には「定年解雇制」に該当。

当然この場合には、解雇予告が必要。
 設問に関しては、定年解雇制の話なので、解雇予告の規制を受ける。


【問題】季節的業務に8月25日から10月30日までの雇用期間を定めて雇い入れた労働者を、使用者が、雇入れ後1か月経過した日において、やむを得ない事由によって解雇しようとする場合には、解雇の予告に関する労働基準法第20条の規定が適用される。

(平成19年 問4E)

【解答】×

【解説】(法20条、法21条)
季節的業務に4箇月以内の期間を定めて使用される者(所定の期間を超えて引き続き使用されるに至った場合は除く)については法20条の解雇予告の規定は適用されません。

「季節的業務…」とくれば、「4月以内の期間を定めて使用される者」⇒「所定の期間を超えて引き続き使用されるに至ったとき」
に初めて解雇予告が必要になります。

設問では、8月25日から10月30日までの期間で、67日間の期間になりますが、雇入れ後1カ月経過後の解雇なので、所定の期間(67日)を超えていないために誤り。

【細谷服飾事件等】 (判例)

【問題】最高裁判所の判例によると、使用者が労働基準法第20条所定の予告期間をおかず、又は予告手当の支払をしないで労働者に解雇の通知をした場合、その通知は即時解雇としては効力を生じないが、使用者が即時解雇を固執する趣旨でない限り、通知後同条所定の30日の期間を経過するか、又は通知の後に同条所定の予告手当の支払をしたときは、そのいずれかのときから解雇の効力を生ずるものと解すべきである、とされている。

(平成18年 問7A)

【解答】○

【解説】(細谷服装事件(昭和35年3月11日最高裁判決))
■解雇の予告や解雇予告手当をせずに解雇した場合の解雇の効力が争われた訴訟。

■結論は、即時解雇としての効力は生じないが、
・解雇通知後、所定の30日の期間を経過するか、
・解雇の通知の後に所定の予告手当の支払をしたとき

上記のいずれかのときから解雇の効力が生じるという内容。


【問題】使用者が、労働基準法第20条所定の予告期間を置かず予告手当の支払もしないで労働者に解雇の通知をした場合には、解雇の通知後30日の期間を経過したとしても解雇の効力は発生しないとするのが最高裁判所の判例である。

(平成21年 問2D)

【解答】×

【解説】(法20条、細谷服装事件(昭和35年3月11日最高裁判決))
■要点は、「使用者が解雇の通知をしたが、予告期間や予告手当を支払っていない場合、解雇の通知後30日を経過した後解雇の効力が生じるのかどうか」という内容。
■結論は解雇の効力は生じる。


【問題】使用者が労働基準法第20条所定の予告期間をおかず、又は解雇予告手当の支払をしないで労働者に解雇の意思表示をした場合には、その意思表示をどのように受け取るかは労働者の選択にまかされていると解するのが相当であるから、労働者は同条所定の解雇の予告がないとしてその無効を主張することができ、又は解雇の無効を主張しないで解雇予告手当の支払を請求することができるとするのが最高裁判所の判例である。

(平成19年 問4C)

【解答】×
■判例(細谷服飾事件)からの問題。
■結論を言うと、設問を見ると労働者に選択権がある旨記載されているが、選択権はあくまで学説で判例等にはないので設問は誤り。


【問題】使用者が労働基準法第20条の規定による解雇の予告をすることなく労働者を解雇した場合において、使用者が行った解雇の意思表示が解雇の予告として有効であり、かつ、その解雇の意思表示があったために予告期間中に解雇の意思表示を受けた労働者が休業したときは、使用者は解雇が有効に成立するまでの期間、同法第26条の規定による休業手当を支払わなければならない。

(平成22年 問2B)

【解答】○

【解説】(法20条、法26条、昭和24年7月27日基収1701号)
■解雇予告をすることなく労働者を解雇した場合⇒解雇の意思表示は、解雇の予告として有効。
■合わせて、その予告期間中に労働者が休業した場合⇒労働基準法第26条の休業手当を支払わなければならない。


【問題】ある労働者を解雇しようと思い、労働基準法第20条の規定に従って、5月1日に、30日前の予告を行った。しかし、その後になって思い直し、同月10日、当該労働者に対し,「考え直した結果、やはり辞めてほしくないので、このままわが社にいてくれないか。」と申し出てみたが、当該労働者は同意せず、それに応じなかった。その場合、当該予告期間を経過した日に、当該労働者は自己退職(任意退職)したこととなる。

(平成16年 問3D)

【解答】×

【解説】(昭和25年9月21日基収2824号、昭和33年2月13日基発90号)
■通達からの問題。
■(原則)解雇予告の意思表示は、解雇予告の相手方である労働者の同意がない限り取消すことはできない。


【問題】使用者が、2か月の期間を定めて雇い入れた労働者を、雇入れ後1か月経過した日において、やむを得ない事由によって解雇しようとする場合には、解雇の予告に関する労働基準法第20条の規定が適用される。

(平成15年 問4D)

【解答】×

【解説】(法20条、法21条2号)

■「解雇予告の適用除外」からの出題です。

「2箇月以内の期間を定めて使用される者」には解雇予告は不要である。
ただし、所定の期間を超えて引き続き使用されるに至った場合は、解雇予告が必要になる。
問題文の場合は、所定の期間(2ヶ月)を超えていないので、解雇予告は必要ない。


【問題】労働基準法第20条の規定に基づき、解雇の予告に代えて支払われる平均賃金(解雇予告手当)を算定する場合における算定すべき事由の発生した日は、労働者に解雇の通告をした日である。

(平成16年 問3A)

【解答】○

【解説】(昭和39年6月12日基収2316号)
『解雇予告手当を算定すべき事由の発生日=解雇の通告をした日』ということで、正しい設問になります。


【問題】使用者が労働者を解雇しようとする場合において、解雇の意思表示は、当該労働者に対し、当該解雇の理由を記載した書面を交付することにより行われなければならない。

(平成15年 問4 )

【解答】×

【解説】(法20条、民法540条)
■解雇の意思表示は口頭でも適法。
労働基準法では、解雇の意思表示を書面で行うことまでは規定されていない。


【問題】使用者は、ある労働者を5月31日をもって解雇するため、5月13日に解雇予告をする場合には、平均賃金の12日分の解雇予告手当を支払わなければならない。

(平成16年 問3E)

【解答】○

【解説】(法20条、民法140条)
■5月31日をもって解雇とするためには⇒30日前の5月1日に通知する必要がある。
■ただし、起算日は民法により翌日の5月2日からになるので、5月13日に解雇予告をする場合は、2日から13日までの12日間の解雇予告手当を支払えば問題なし。  


【問題】労働基準法第20条では、使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少なくとも30日前の予告をしなければならないと規定しているが、労働者側からする任意退職についても、就業規則その他に別段の定めがない場合には、同条の趣旨に照らして、少なくとも30日前の予告が必要であると解されている。

(平成15年 問4A)

【解答】×

【解説】(法20条、民法627条1項)
■労働者からの労働契約の解除(任意退職)⇒労働基準法に規定なし。
民法627条1項の規定により「解約の申し入れの日から2週間経過した日」に労働契約は終了。


【問題】死亡した労働者の退職金の支払いは、権利者に対して支払うこととなるが、この権利について、就業規則において、民法の遺産相続によらず、労働基準法施行規則第42条、題43条の順位による旨定めた場合に、その定めた順位によって支払った場合は、その支払いは有効であると解されている。

(平成24年 問1B)

【解答】〇

【解説】(法23条)

■就業規則において、受給権者の範囲、順位が、民法の規定する相続人と異なる定めをしている場合でも、遺族の生活保障を目的としたものとし有効と判断。


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